そして現在。流しの師匠の元からも離れ、完全にフリーランスの流しとして活動している。流しにも組合があり、所属していれば活動できる店舗や街が広がるが、ほかの流しとの折り合いを付けるなどの面倒ごとも増える。そこで完全無所属となり、自ら流しを受け入れてくれる飲み屋街を開拓する道を選んだ。2017年10月にオープンしたばかりの新宿名店横丁を拠点のひとつとしているのも、そうした事情からだ。名刺やSNSページ、公式サイトで出張流しも募集しており、最近はイベントで演奏する機会も増えてきたという。
手取りベースでいえば、前職と同じくらいには稼げている。ただ、昨年体調不良で声帯を痛めたときは丸々1カ月間休み、完全な無収入を味わいもした。
「やっぱり保証がないので、ものすごく不安になるときはありますよね。そういうときは不安の要素を一つひとつノートに書いて、それぞれ検証していって乗り越えるようにしています」
大きな会社に属していても安心はできなかったと思う
それでも精神状態は2012年に比べるとはるかにいいとか。また、同種の不安さは会社員時代もゼロではなかったと振り返る。
「正直なところ、どれだけ大きな会社に属していても自分は安心できなかったと思うんですよ。本やメディアを通して入る情報からも終身雇用なんて望めそうにないですし、これまでの体験と照らし合わせても、ずっと安泰だと信じられないというか。
もし会社でしっかりと結果を残せていたら、その会社が倒産としたとしても、自分のスキルを生かして業界内を渡り歩くイメージが持てたと思うんですよ。けれど、僕には無理でした。そうなると先が見えなくて、安心なんてできません。会社に対しても自分に対しても」
そんな四元さんだが、「いつまで流しを続けるか?」という質問には、「できれば60歳までやりたい」と明言している。約30年後。ずいぶんロングスパンだが、少なくとも会社員を続けるよりも現実的な目標であることは確かだという。
「流しとして結果を残せる自信はどうやら持てているんですよ(笑)。もっと体調面に気をつけなくちゃいけないですし、将来キャッシュレス化したときや法的なところで課題が生まれたときもきちんと手を打たないとならないでしょうが、そこは向き合えるんじゃないかと思えるんです」
ただし、途中で流しを辞めることも想定してはいる。それは悪いルートばかりではなく、ミュージシャンとしてメジャーになる道も含んでいる。バンド活動は休止したが、現在も作曲活動を続けており、iTunesやYouTubeでの配信はコンスタントに続けている。
「流しの四元」と「ミュージシャンの四元」。今は別個の存在だが、いずれブレークして合流することを期待している。どちらが主流になるかはわからないけれど。
〔※撮影協力:大衆馬肉酒場 三村 新宿西口店(新宿名店横丁内)〕
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