日本人は「人口減少」の深刻さをわかってない 経済だけでなく社会全体の士気も弱っていく

拡大
縮小

➁経済が縮小する

今のままではあと10年そこらで、労働力人口が500万人減少すると予想されている。実際に、文部科学省の「18歳人口の将来推計」によると、2028年に22歳になるのは106万人。今年50歳になる1968年生まれの人が18歳になる1986年の18歳人口は185万人。10年後の2028年の106万人と比較すると約80万人も少ない。

【2018年5月9日22時50分追記】記事初出時、「今年60歳になる1968年生まれ」と記述していましたが誤りでしたので、上記のように修正しました。

労働人口が減少すれば、消費の中心となる人口が着実に減少していくことになる。流行とか消費に興味がなくなった年金生活の高齢者ばかりの社会では、経済が縮小していくのは当然のことだ。深夜営業や年中無休が売り物だったコンビニや牛丼チェーン店も、すでに人手不足が深刻で24時間営業や365日営業が困難になりつつあると言われる。アマゾンが始めた無人のコンビニも、実は日本にいちばんニーズがあるのかもしれない。

社会全体の高齢化とともに起こること

③チャレンジしない「責任回避社会」がはびこる

人口減少社会では、若者の比率がどんどん減少して、企業の管理職や政治家、行政をつかさどる官僚や役人も、すべてが年寄り中心の社会になっていく。チャレンジよりも安定志向が強く、現在の生活レベルを脅かすことには臆病になる。

もともと日本企業は、昔から海外転勤する場合でも、ほとんどの社員が数年で日本に帰国してしまう。韓国や中国のように、海外の勤務地に1度就いたら、そこに骨を埋めるようなマインドは持ち合わせていない。

実際に、日本企業が海外に進出する場合には、ほとんどの企業が現地のスタッフに運営を任せる「現地化」の推進で、日本企業の知名度を上げてきた。しかし、そのビジネスモデルが今後も通用するのかといえば大いに疑問だ。

日本の場合、役所や病院、銀行、保険会社などなど、何らかの手続きや契約に行くと山のように同意書を書かされる。それらの書類の山は、ほとんどが相手の企業や役所の担当者の「責任回避」のためのものと言っていい。

イベントやテレビCMも数人のクレーマーによる抗議の電話だけで、イベントを中止し、放映を自粛してしまう。人口減少社会では、そうした傾向がさらに強まることが予想される。どうすれば自分たちが責任を取らずに済むのか――社会全体の高齢化とともに、責任回避のマインドがはびこる。ここでもまた経済の縮小が起こってしまう。

責任回避社会は、物事の意思決定にも時間がかかる。日本企業の多くは意思決定が遅いばかりに、グローバルなビジネスチャンスを失ってきた。日本企業の中にまったく新しい価値観を持った人材を投入しなければ、グローバルでは勝てない時代が来ているのだ。

④不動産価格の崩壊が示す人口減少の影響

バブル時代、あるいはその後に購入したマンションや一戸建ての値崩れ現象が、都心の一部を除いて現在も起こっている。都心から1時間圏内であってもバブル時代にローンを組んで5000万円前後で購入した不動産が、現在では2000万円にも満たない。とりわけ、一戸建てはわずか30年程度で住宅の価値はゼロに近くなる。

自分や家族が住んでいた住まいだから、3000万円程度の資産の目減りは仕方がないと思うかもしれないが、ここまで不動産価格が目減りしてしまう国は世界でも珍しい存在だ。しかも、ローンを支払って返済してきたことを考えると、ローン金利だけで2000万円ぐらいは余計に支払っている可能性も高い。

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