日本人は「人口減少」の深刻さをわかってない

経済だけでなく社会全体の士気も弱っていく

2038年には、社会保障関係費だけで50兆円を超えることになる。2018年度の税収は前年と比べて3兆円増えて59兆円に達するようだが、縮小する経済の中で今後税収が増えていく可能性は低い。税収も伸びないが、社会保障関係費はどんどん膨らんでいく――。

人口減少社会を解決するにはどうすればいいのか。残念ながら、その答えは意外とシンプルかもしれない。かつて、欧州でも同じように人口減少に直面したときに、ほとんどの国は移民を増やす方法を採用した。しかし、その背景には高度なスキルを持ったIT技術者など高度人材の獲得競争があったからだといわれる。

人口減少そのものを解決する方法

人口減少社会では、経済成長に限界がある。経済成長を軌道に乗せるには、人口減少そのものを解決するしか方法はない。その方法としては、次のような方法が考えられるが、いまや選択肢は数少ない。

➀ 出生率を飛躍的に増やす

人口統計の常識からすると、一度人口減少が始まった国が、再び人口を増加させて現状回復させるためには100年かかるそうだ。つまり、尋常な方法では出生率は高くならない。結婚して第2子ができるまでは、国家もしくは企業が夫婦の面倒を見るといった、型破りな政策を打ち出すぐらいのインパクトがないと、日本の人口は増えないのではないか。

先進国の中で、数少ない少子化を克服した国にフランスがあるが、行政のバックアップと子育てをサポートする民間企業のコラボが機能しているようだ。たとえば、「男の産休」は7割が取るといった社会的コンセンサスができている。

その点、日本では女性活用社会といいながら安心して子育てもできないし、そもそも保育園や学校でも、責任回避のツールになっている連絡帳だの、PTAだの煩雑な手続きやイベントが多すぎる。女性が、子育てと仕事を両立させられる社会をつくらなければ、日本は永遠に沈んでいくだけだろう。

安倍政権も、教育システムにメスを入れようとしているが、それをやるなら国家公務員のキャリア、ノンキャリア制度を直ちに全面廃止して、エリートではない人が子育て行政の現場に立たなければ解決にはならない。

➁ ロボットやAIによる生産性向上で人口減少に勝つ

安倍首相が、人口減少の対策として掲げたのが「ロボットやAI(人工知能)の活用」だが、最近のトレンドとして機械化できるものはロボットに任せて、ビジネスはAIに任せる。そのうえで、国民に対しては最低限生活できるおカネをばらまく「ベーシックインカム」を充実させる、という方法が話題になっている。

とはいえ、人口減少をロボットやAIがカバーするには限界があるし、抜本的な解決策にはならない。かつて、米国ホワイトハウスの金融担当者が「時給20ドル未満の労働者はAIに仕事を奪われるだろう」と予測したが、外国から優秀な人材が入ってこない日本の現状では、それだけのシステムを構築する技術が育つとも思えない。

ちなみに、日本の高齢化がピークになる2040年代には、コンピューターが全人類の知性を超える「シンギュラリティ(技術的特異点)」がやってくるといわれている。その頃には、行政を人間に代わって遂行する「汎用AI」が、4000万人にも達するといわれる高齢者の存在を、不要とする決断を下すかもしれない。

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