「米朝首脳会談」は準備段階から非常識すぎる トランプ政権はまともに準備できるのか
大統領に質の高い情報と有益な助言を届けるには、どうすればいいのか。その方策を見いだすことがホワイトハウスのスタッフにとって大きな課題となっているわけだが、これは従来の政権には見られなかった新種の問題である。
達成目標をどう設定するか
首脳外交を成功させる秘訣は、首脳会談の最中にほとんど何も起こらないようにすることだ。実際、大統領の判断が必要になる事案はごく少数に限られる。各国首脳が会談の中で、重大な懸案事項について話し合うことはある。
だが、そこで何かが解決するとか、実のある交渉が行われるといったようなことは、まずない。首脳会談の主な目的とはイメージづくりであり、それによって各国の世論に影響を与え、より下のレベルの官僚がどのように仕事を進めるべきなのか、その基本的な方向性を定めることにある。
米国側が最大の目玉にしようとしているのは
そうはいっても外交官は、首脳会談には何らかの動きが伴わなければならないと考えている。なぜなら、会談の実質的な内容がどうあれ、世の中はたいてい、何らかの成果が発表されるものと期待しているからだ。したがって、首脳会談が行われることになれば、米国の外交官は関係国の外交官と頻繁に打ち合わせを行い、会談の“成果物”について交渉することになる(共同声明を公表する予定があれば、こうした成果物は共同声明の草案に反映されることになる)。
とはいえ、これは公式の外交ルートが存在する場合についての話だ。トランプ大統領と金正恩委員長のトップ会談に関していえば、重要な成果を生み出すために事務方がタッチできる事前作業など、ほとんどない。正式な国交がないことに加えて、非核化をはじめとする主要課題について両国の立場に大きな隔たりがあるからだ。
ただ、いくつかの達成可能な成果をめぐって、米朝が調整を進めている可能性はある。実際の会談がどう展開しようとも、両国首脳が「事態は進展した」と主張できるようにするためだ。中でも米国側が最大の目玉にしようとしているのが、北朝鮮に拘束されている米国人の解放であり、この件で北朝鮮と水面下の交渉を行っているのは間違いない。
また、人道問題に関する何らかの意思表明が行われるとか、米朝間で対話ルートを構築する可能性も考えられる。ホットラインが築かれる可能性さえある。このような信頼醸成のための政策であれば、双方とも実質を伴った譲歩を行わなくて済むからだ。