「米朝首脳会談」は準備段階から非常識すぎる トランプ政権はまともに準備できるのか

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大統領へのブリーフィング

金正恩委員長がしたたかに準備を整えて会談に臨んでくる可能性が高いのに対して、トランプ大統領が的確な情報と現状認識を持って会談に向かうことができるかどうかも懸念事項だ。この点に関してホワイトハウスのスタッフは、少し知恵を絞る必要があろう。

通常、首脳会談を控えた大統領の下で行われる事前準備は、次のような手順を踏む。まず、NSCが差配する形で、主要トピックについてのブリーフィング資料を用意せよ、との要請が関係省庁に下る。

用意される資料は簡潔明瞭なもので、1つのテーマにつき最大2ページ以内で、大統領が知っておくべきすべての情報をまとめることが求められる。フォントはクーリエ(タイプライターのような書体)で、文字の大きさは14ポイントだ。

トランプ氏に伝えられるのは重要事項のみ

このようなブリーフィング資料は大統領が読むことを想定して書かれているが、実際に大統領が目を通すことはあまりない。NSCがブリーフィング資料の中から都合のいい部分を拾い上げて、独自のブリーフィングメモを作成し、大統領に論点を伝えるのが通例だ。例外としては、国務長官が大統領に宛ててしたためる長文のメモが存在する。

前オバマ政権では、この国務長官からのメモが唯一、大統領に詳細な情報を伝えられる可能性のある文書だと認識されており、事務方は特に注目していた。だが、トランプ大統領がこれほど長文のメモを読むことはまずないだろう。

各省庁から上がってきた情報をどのようにしたらトランプ大統領に最も効果的に伝えることができるか。その方法についてNSCのスタッフがあれこれ思案しているのは間違いない。すなわち、口頭による対面でのブリーフィングが増えるとか、資料を従来の形式ではなく、重要問題だけに限定した「すべきこと、してはならないこと」リストに大きく作り変えるとか、そういった可能性があるということだ。

詳細なバックグラウンド情報に圧倒されて、トランプ大統領が混乱するような事態は避けねばならない。トランプ大統領にはおそらく、大まかな概要と、踏み越えてはならない「一線」に関する情報だけが伝えられることになるのだろう。

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