安倍政権に見る「永田町の闇」と「官僚の悲哀」 公文書がらみが出るわ出るわで「5大疑惑」に

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首相は「真相を徹底解明し、膿を出し切って、再発防止策を徹底する」と繰り返すばかりだが、「一連の問題は結局、首相自身に行き着く」(立憲民主党)との指摘も多く、野党側は「出すべき膿は首相自身」(共産党)と口を揃える。このため、政府与党が後半国会の最重要法案と位置づける働き方改革関連法案の会期内成立も困難視される状況となりつつある。

追い詰められた首相は、外交攻勢の一方で自身に忠誠を誓った側近官僚をスケープゴートとして、自らへの疑惑の波及に歯止めをかけ、自民党総裁3選への道を開こうとしているように見える。しかし、盾にされたエリート官僚にしてみれば、双六(すごろく)で言えば上りの直前でサイコロを振りそこなって、得られたはずの栄誉と収入を失うという、「運が悪かった」では済まされない悲劇が待っている。

日報問題で標的の稲田氏も「首相の任命責任」

自衛隊のイラク派遣部隊の活動に関する日報隠蔽問題では、官僚に代わって稲田朋美前防衛相が野党攻撃の標的となっている。国会審議では小野寺五典防衛相が必死に弁明を続けるが、隠蔽疑惑は稲田防衛相の在任中の問題だからだ。稲田氏については「そもそも、防衛相になる資格がなかった」(自民長老)との見方が多く、文民統制(シビリアンコントロール)を疑わせる事態を引き起こしたのも稲田氏の政治家としての資質欠如が原因との指摘が多い。

稲田氏は首相が幹事長時代に見出した女性弁護士で、2005年の郵政解散で落下傘候補として福井1区から初当選した。首相と歴史認識などを共有する稲田氏は、首相の寵愛を受けて党政調会長にも抜擢され、首相が「女性総理候補」と評価した時期もあった。それだけに、2016年夏の防衛相起用はまさに安倍人事とされており、「(隠蔽問題での稲田氏の失態も)責任は首相にある」(自民長老)との指摘が少なくない。

政局が混迷を極める中、永田町では半世紀以上も前の「黒い霧解散」も取りざたされ始めた。首相が自民党総裁選で3選を狙うには、「現状をリセットするしかない」(細田派幹部)というわけだ。しかし、与党幹部の間では「リセットどころか、自民党自体を窮地に追い込む自爆解散になりかねない」(閣僚経験者)との声が支配的だ。

泉 宏 政治ジャーナリスト

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いずみ ひろし / Hiroshi Izumi

1947年生まれ。時事通信社政治部記者として田中角栄首相の総理番で取材活動を始めて以来40年以上、永田町・霞が関で政治を見続けている。時事通信社政治部長、同社取締役編集担当を経て2009年から現職。幼少時から都心部に住み、半世紀以上も国会周辺を徘徊してきた。「生涯一記者」がモットー。

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