安倍政権に見る「永田町の闇」と「官僚の悲哀」 公文書がらみが出るわ出るわで「5大疑惑」に

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こうした騒動の中、火に油を注いだのが福田淳一財務事務次官のセクハラ疑惑だ。12日発売の『週刊新潮』が報じたもので、福田氏を取材する女性記者に対し、繰り返しセクハラ発言をしていたことを暴露した。福田氏は、週刊新潮記者の突撃取材に「そんなことは言っていない」などと否定していたが、新潮側は13日午後にニュースサイトで「胸触っていい?」「浮気しない?」などの福田氏とみられる音声データを公開した。

麻生太郎財務相は同日午前の段階では「セクハラとしては事実ならアウトだ」としながらも更迭などの処分は否定した。しかし、音声データの公開で野党側の辞任要求も高まり、山口那津男公明党代表も「きちんと正すべきは正すべきだ」と福田氏を批判した。

財務省は16日午後、福田氏への聴取結果を踏まえて一連の報道に対し、「(福田次官は)セクハラに該当する発言をした認識はない」などとするコメントを発表した。併せて、財務省記者クラブ(財政研究会)加盟の女性記者に対する調査協力も要請した。さらに、福田氏は新潮社を名誉棄損で提訴する考えも示した。

ただ、財務省コメントでも音声データの主が福田氏であることは明確に否定してはおらず、政府与党内でも「意味不明の言いわけなどしないで、早く決着させないと傷が広がるだけ」(閣僚経験者)と早期更迭での決着を望む声が強まっている。菅義偉官房長官は16日午前の記者会見で、福田氏の進退について「任命権者である(麻生太郎)財務相が対応すべき話だ」と突き放し、「財務省は緊張感を持って行動してほしい」と苦言を呈すなど、官邸と財務省の軋轢も露呈した。

党長老の伊吹氏は「安倍さんには道義的責任」

最強の官庁とされる財務省だが、改ざん事件で3月9日に国税庁長官だった佐川宣寿元理財局長が辞任したばかりだ。麻生財務相が福田氏も更迭するとなれば、本来なら国会終了後に予定された財務省幹部人事は「混迷の極致」(財務省OB)となり、来年10月からの消費税の10%への引き上げにも影響が出かねない。さらに、国民の間に「エリート官僚はうそつき」との受け止めが広がることで、佐川氏の証人喚問での「首相らは無関係」などの証言や、来週にも国会招致されるとみられる柳瀬氏の発言が、国民から信ぴょう性を問われる事態ともなる。

こうした相次ぐ政府の失態について、党長老の伊吹文明元衆院議長は「安倍さんには道義的責任がある」と指摘し、首相の「政治の師匠」でもある小泉純一郎元首相も、9月の自民党総裁選での首相の3選について「難しいだろうな。信頼がなくなってきたから、何を言っても言い逃れにとられてしまう」と厳しい言葉を口にした。

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