安倍政権に見る「永田町の闇」と「官僚の悲哀」 公文書がらみが出るわ出るわで「5大疑惑」に

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学校法人「加計学園」の獣医学部新設問題をめぐり、与党は16日、元首相秘書官の柳瀬唯夫経済産業審議官らの国会招致に応じる方針を野党側に伝えた。ただ、招致の時期は首相訪米後の23日とし、招致の形式も、虚偽の発言をしても偽証罪に問われない参考人招致を提案した。しかし、証人喚問を強く要求してきた野党側は同意せず、調整は17日に持ち越した。

柳瀬氏は、首相秘書官時代の2015年4月に首相官邸を訪問した愛媛県や今治市の職員らと面会したとされる。その際、獣医学部新設について「首相案件」などと発言したとの記録が愛媛県作成の文書(備忘録)に残っていたことが判明して、問題となった。柳瀬氏は「記憶の限りでは、会っていない」と面会自体を否定しているが、自治体側の記録もあるだけに、与党側も招致に応ぜざるを得ないと判断した。ただ、柳瀬氏が17日から20日までの首相の訪米に同行するため、与党側は23日招致を野党側に提案したわけだ。

柳瀬氏の「記憶の限り」で、首相答弁の崩壊を防ぐ

野党側は柳瀬氏のほか、内閣府で国家戦略特区を担当した藤原豊経産省貿易経済協力局審議官や、学園の加計孝太郎理事長の喚問を要求。森友学園への国有地格安売却問題で首相夫人の昭恵氏ら、自衛隊海外派遣部隊の日報問題で稲田朋美元防衛相らの喚問も求め、今後も政権攻撃を一段と強める構えだ。

獣医学部新設をめぐる面会については、昨年7月にも国会で野党が追及したが、柳瀬氏は「記憶の限りでは、愛媛県や今治市の方と会ったことはない」と面会自体を否定した経緯がある。今回の問題再燃後も柳瀬氏は面会の有無だけでなく「首相案件というようなことを言うはずがない」と備忘録の内容を否定したが、自民党内からも「記録と記憶では柳瀬氏のほうが分が悪い」との声が広がる。

そもそも、加計問題で柳瀬氏が官邸で関係者と面会し、獣医学部新設に関して首相案件を前提にアドバイスなどをしたことが事実なら、首相が国会で「(加計学園の計画について)知ったのは(申請が認められた)2017年1月20日だった」という答弁が崩壊しかねない。だからこそ、柳瀬氏も「記憶の限りでは」という苦しい否定に追い込まれたとみられている。

森友問題で追及の標的になった佐川氏も肝心の文書改ざんの動機などについては「刑事訴追のおそれ」を理由に証言を拒否した。財務省、経済産業省という主要官庁の超エリートの頑ななまでの沈黙は、「政権を守るために最後の砦になる」(官僚OB)との決意からともみえるが、背景に「1強政権の歪み」があることは隠しようがない。

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