光武:ただし、社会常識や社会の秩序機能に照らし合わせて見たとき、たまたま外れたほうにカテゴライズされる層はどうしても出てきます。今の社会ではそういう一面が少しでも見つかるとマイノリティという烙印を押されてしまいます。
つまり、一個でも合わない側面があると「はい、あなたはマイノリティですね」と言われてしまうし、逆に自分でも言ってしまう。他の発達障害当事者にはたまに怒られることもありますが、僕は「発達障害の自分はマイノリティだ」という意識がすごく嫌いです。
「私はマイノリティだから」と、自らを社会から隔離してしまっているような。そういう側面が、このマイノリティという概念をブラックボックス化しているように思います。マイノリティに見られるように自らパフォーマティブに振る舞うことで、二重の共犯関係が生まれていると僕は感じます。
補聴器を着けていることで求職活動中不利に
――山村さんは発達障害に加え、性別はXジェンダー(男性でも女性でもない性)、聴力も若干弱いため、前回バーでお会いした際は補聴器を着けられていましたよね。大多数の人と違う点がいくつかあるように思います。
山村:今日は会議室で隔離された空間なので必要ないと思い、補聴器は着けていませんが、聴力は20代の平均よりも少し低く、40~50代の平均と同じです。そして、人の声以外の“ノイズ”と呼ばれる音に関しては、なんと80代の平均と同じです。だけど、聴覚障害かどうかと言うと、健康に聴こえる健聴範囲内なので、医学的には「異常なし」になります。
自分自身は補聴器を買って使っているのですが、これは「メガネと同じだな」と思います。近視の人は視界がボヤけるからメガネをかけて視力を矯正する。自分は音を聞き取りづらいから補聴器を着けて矯正する。
以前、求職活動中に「補聴器を着けているから採用できない」と、断られたことがありました。「補聴器を着けているから仕事ができない」と言う方には「じゃあ、近視の人はメガネやコンタクトレンズを外して仕事をするんですか?」と聞きたいです。
身近に補聴器を着けている人って、一般的には高齢者か障害者手帳を持っている聴覚障害者くらいです。見慣れないものって人は怖いんです。今、メガネはこれだけ普及して、ファッションの一部にもなっています。でも、補聴器は見慣れないものなので、異常なものとみなしてしまう。
吉田:カッコいい補聴器を作ったらいいのかも。『ドラゴンボール』に出てくる戦闘力を測る、「スカウター」みたいな補聴器(笑)。山村さんは補聴器が目立たないように黒にしたの?
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