結局、ハリル監督は3年で何をもたらしたのか デュエル主体のサッカーでやりたかったこと

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しかしながら、2014年ブラジル大会のギリシャ戦(ナタル)に象徴されるとおり、横パスを各駅停車のようにつないで大舞台で攻めあぐねた苦い過去も日本代表にはある。ボスニア人指揮官の言うタテに速い意識もやはり重要だ。それを日本人らしさとうまく融合できるように監督がマネジメントし、選手たちもピッチで実践できるようになればよかったが、いいバランスを最後まで見いだすことはできなかった。そこは本当に悔やまれるところだ。

デュエル、タテへの攻め以外にも、ハリル監督がもたらしたものは少なくなかった。アルベルト・ザッケローニ監督時代からアギーレ時代にかけて固定しがちだった本田、岡崎、香川真司(ドイツ・ドルトムント)ら主力メンバーをいったん横に置いてフラットな競争をあおったこと、最終予選だけで43人もの選手を招集して多くの新戦力にチャンスを与えたこと、井手口や三竿健斗(J1・鹿島アントラーズ)のような20歳前半の若手を思い切って抜擢したことなどが好例だろう。

毎年オフシーズンの5~6月に欧州組を集めてフィジカル強化のトレーニングをしたことも賛否両論はあったが、前向きにとらえている選手もいる。「今まで走ることの重要性をそこまで感じてはいなかったけど、あの合宿を経験してからは自分で走りのトレーニングを取り入れるようになり、いいコンディションを維持できている」と川島永嗣(フランス・メス)はしみじみ語っていた。

彼は監督解任の報を受け、「本気で自分を成長させようとぶつかってきてくれた情熱に対しての感謝の気持ちは伝えたくても伝えきれない」とブログにつづっていて、指揮官の「日本を強くしたい」という熱意を強く感じ取っていた。他の選手たちにも似たような思いはあるはず。それも忘れてはいけない部分ではないか。

ハリルが残したものから何を踏襲するのか

技術委員長としてハリルジャパンを支え、今回新監督に就任した西野朗氏。4月12日に就任会見を行う(写真:REUTERS/Toru Hanai/File Photo)

田嶋会長も「これまでやってきたことを全否定することはできない」と話したが、全否定したら日本サッカーはさらなる迷路にはまってしまう。

ロシア本大会の直前合宿スタートの5月21日まで1カ月余り。その間に西野朗(あきら)新監督の下で新たな体制を整え、ハリル流の検証をしつつ、何を踏襲すべきかを判断するのは非常に困難な仕事に違いない。

ただ、それをきちんと行い、1つの方向性を明確に定めないかぎり、選手たちは一丸となってロシアに向かうことはできない。とにかく今はシンプルに日本が目指すべき方向を定めること。それが最重要テーマである。強硬な指示が目立ったハリルホジッチ監督の下では萎縮したり、恐怖心を抱きがちだった選手たちも今、ここでメンタル面を切り替え、自分のよさを最大限出し切るように割り切ってほしいものだ。

(文中敬称略)

元川 悦子 サッカージャーナリスト

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もとかわ えつこ / Etsuko Motokawa

1967年、長野県生まれ。夕刊紙記者などを経て、1994年からフリーのサッカーライターに。Jリーグ、日本代表から海外まで幅広くフォロー。著書に『U-22』(小学館)、『初めてでも楽しめる欧州サッカーの旅』『「いじらない」育て方 親とコーチが語る遠藤保仁』(ともにNHK出版)、『黄金世代』(スキージャーナル)、『僕らがサッカーボーイズだった頃』シリーズ(カンゼン)ほか。

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