スマホばかり頼る人が脳を使えていない理由 視覚優位の日常が「聞く力」を弱らせている

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こんな聴覚系の問題を解決するのが「ラジオ」である。人の言葉が一方的に流れてくるラジオは、「よく聞く」訓練にはもってこいで、流しているだけで聴覚系や理解系の部位が鍛えられる。ラジオを聴く、という行為は、実はただ耳に音が入ってくるのではなく、脳が音を選んで聞き続けている行為。これは脳を強化するトレーニングそのものだ。

さらに、ラジオは声だけでいろいろと想像する。これも脳の各部位を刺激してくれる。ラジオを聴きなれた人は、パーソナリティーのその日の声を聴き、「あ、きょうは元気がないな」などと判断できる。「耳で空気が読める」ほど、聴覚系が発達している証拠だ。

「ラジオ脳」があなたを救う

ここで私はみなさんに「ラジオ脳」になることをおすすめする。「ラジオ脳」とは、聴覚系の部位が高度に発達し、それにより、聴覚系の部位と関係の深い、その他の7つの脳の部位(記憶系、思考系、視覚系、理解系、伝達系、感情系、運動系)の機能も同時に強化された脳のこと。意識的にラジオを聴くことで、このラジオ脳を手に入れることができる。

また、私がおすすめしたいのが「ながらラジオ」。「ながらラジオ」は、聴覚系の部位とその他の部位を同時に刺激し、鍛えることができる。

『脳を強化したければ、ラジオを聴きなさい』(宝島社)。書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

たとえば、料理や掃除などの家事をしながらラジオを聴いてみる。この場合、ラジオの音声を耳の器官で感受して聴覚系を使い、体を動かすことで運動系を同時に使っていることになる。

まさに、聴覚系と運動系の部位を同時に鍛えているわけだ。あるいは、ラジオのスポーツ中継や、ドラマ、スタジオ外からの実況レポートなどを聴きながら、その光景を想像してみてはどうだろうか? この場合、聴覚系と視覚系の部位を同時に働かせていることになり、これもまたふたつの部位を鍛えていることになる。

脳というのは非常に正直で、使えば使うほど、鍛えれば鍛えるほど、成長する。だから、脳トレは何歳になっても始めるのが遅すぎるということはない。その脳トレの中心にくるのが「聞く力」、聴覚系の鍛錬。それがラジオで簡単に、そして有効にできる。

加藤 俊徳 医学博士/「脳の学校」代表

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かとう としのり / Toshinori Katou

脳内科医、医学博士。加藤プラチナクリニック院長。株式会社「脳の学校」代表。昭和大学客員教授。脳科学・MRI 脳画像診断の専門家。1991年に、現在、世界700カ所以上の施設で使われる脳活動計測fNIRS(エフニルス)法を発見。1995年から2001年まで米ミネソタ大学放射線科で脳画像研究に従事。ADHD、コミュニケーション障害など発達障害と関係する「海馬回旋遅滞症」を発見。加藤式MRI 脳画像診断法を用いて、小児から超高齢者まで1万人以上を診断・治療。得意な脳番地・不得意な脳番地を診断し、脳の使い方の処方を行う。『1万人の脳を見た名医が教える すごい左利き』(ダイヤモンド社)など著書多数。

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