朝に来た人がランチ休憩で退職してしまう
「日本でもだいぶ崩れつつありますが、こちらはもともと終身雇用という制度が定着していません。“日本で会社を辞める”と言ったらちょっとした大事に聞こえるけど、こちらでは同じ会社に2年もいれば古株扱いで、“気づいたら辞めていた”“半日、1週間で辞めた”なんてことはザラにあります。“朝来たばかりなのにランチ休憩に行ったきり帰ってこない”なんてこともありましたよ(笑)」。
サービス業、特に飲食業の場合には、労働力の不足が味や品質すべてに影響を与えやすい。会社の中である程度上に行けば、目的を持って働ける社員も出てくるが、下のほうの人は暑い厨房に入ったり、皿を洗ったりと大変。だから、給料や福利厚生などで引き止めないといけないが、それでも難しい。「それなら日本人を雇えばいい」となるが、日本人を当地で雇うにはコストがかかる。「日本からシンガポールに進出してきた企業の経営者が、まず苦労するのは、こうした労働文化の違いや人材の確保といった点ですね」(高橋氏)。
そうしたシンガポールならではといえる難しさはありつつも、日本食を展開するための事業環境は、十数年前に比べるとだいぶよくなったそうだ。インターネットが普及したこともあり、日本に行ったことがないシンガポリアンでも日本の流行を感じ取ることができるうえに、日本食に対する関心も高まっている。だから大規模な宣伝をしなくても、新店がオープンすれば行列もできやすい。飲食業界の有名な日本発のブランドも、どんどん出店を進めてきているという。
そして高橋氏は「日本食はもっと自信を持っていい」と言う。同氏はこれまでラーメン、うどん、そば、お好み焼き、あんみつも手掛け、シンガポリアンの好評を得てきた。その経験から日本にはインタレスティングなものがたくさんあると確信している。そして、「やっぱり日本のサービスは世界一です」(高橋氏)とも。
高橋氏は今後、得意とするシンガポールでのブランド拡大を推し進めつつも、これまでにも行ってきたマレーシア、インドネシア、中国、ベトナムなど周辺国への進出を強化するという。「“日本に行ったら、あのお店で絶対食事したい”そんなブランドを、これからもどんどん世界に出していきますよ」。同氏による日本食ブランドのグローバル展開は加速していく。
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