そしてもうひとつが「激辛火山ラーメン」。辛味噌にチリソースを加えてシンガポール風にアレンジされており、普通の日本人なら食べられないくらい辛いはずだが、当地では人気だという。ちなみに、チリソースをはじめシンガポールでは辛味は人気。おそらく、赤道直下で暑い気候のため、より新陳代謝を促すためと高橋氏は分析する。
「サイドメニュー」も充実している。シンガポリアンの中でも特に中華系の人たちと日本人とでは、ラーメン屋での食事の仕方が異なる。日本人ならあまり会話もなく10分程度で完食し、さっと店を出る人が多いだろう。一方、中華系の人は、みんなで来ていろんなものをシェアしながら食べる。ラーメン屋と言えども、ドリンクも飲みながら食事の場を楽しむような感覚だ。だから味千ラーメンでは、各店舗の客層に合わせてアラカルトメニューや、ラーメンとライスやおかずのセットを増やしている。
フランチャイジーでありながら、ここまで自由度高く、味やメニューをローカライズさせられているのには、フランチャイザーである熊本の重光産業の理解があるからだという。熊本の本部から、「現地に合ったものを出さないといけない。日本の感覚を押し付けてはいけない。香港だろうが、上海だろうが、シンガポールだろうが、基本は守りつつ、あとは現地にいる方におまかせします」と、1店舗目の開店当時から言われているそうだ。
2年いれば古株、「ジョブホッピング」が課題
こうしてうまく日本の味をローカライズさせ、シンガポールに定着した味千ラーメンだが、逆に日本に学び、追いつかなければならないのが「サービス」だという。「そしてこれは、弊社やラーメン屋だけに限った話ではなく、シンガポール全体の課題です」と高橋氏。
「サービスというものは、“お客さんによくしたい”という根本さえ理解できれば、あとはどうにでもなるんです。だけどその根本がない。ここ(シンガポール)はいろんな国から来た人がいる。その人たちみんなが小さい頃から、よいサービス、よい接客を受けてきたかというと、そういうわけではない。ただ、サービス業ですから、たとえ日本がすばらしすぎるのだとしても、そのレベルまで持っていかないといけません」(高橋氏)。
サービスの根本を理解し、それを実行に移すにはどうしても時間がかかる。しかし、シンガポールのビジネスパーソンならではといえる働き方が、その足かせになっているという。短期間で転職を繰り返す働き方「ジョブホッピング」だ。
無料会員登録はこちら
ログインはこちら