楽天OBが始めた「突然死予防ビジネス」の全貌 お手軽価格の「銀座で脳ドック」を受けてみた

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メディカルチェックスタジオは大手長距離バス会社やIT企業と法人一括契約を結んでいる。特に多くの人命を預かっている長距離バスの運転手は、職務中に脳梗塞などを起こすと大惨事になるため、受診を義務付けている会社もある。

何を隠そう、神山氏が楽天トラベル社長室長時代にドライバーの脳の病気による大規模なバスの事故への対応を経験したことが、本事業を立ち上げるきっかけになっている。「職場での従業員の突然死を防ぐために、あなたの会社も契約しませんか?」という営業トークが多くの企業に受け入れられているようだ。

30分1万7500円で手に入る安心感

4月2日月曜日、「診断結果のお知らせ」というメールが届いた。

恐る恐る、パスワードを打ち込んで結果を見る。

脳萎縮    なし
脳梗塞    なし
脳腫瘍    なし
動脈瘤    なし
血管閉塞   なし
総合判定   異常所見は認めませんでした

よかったぁ~。

あれもこれもそれも、忘れまくるのは「正常な老化」ということですね。この安心が30分1万7500円で手に入るなら「安いもの」というのが今回の所感である。しかし尾原氏のケースにもあるように動脈瘤などはある日突然できるものではなく、自覚症状のまったくないところから少しずつ大きくなっていくらしい。

定期的にチェックしておけば、大事になる前に処置できる。30分1万7500円を高いと思うか安いと思うかは人ぞれぞれだろう。しかし血管のスペシャリストである知久先生はこう言っている。

「とにかく医療の現場にいると、直しても直しても患者さんが来るんです。本当にキリがない」

高齢者が要介護になる大きな原因の1つが脳の病気である。発病すれば一命を取り留めても、後には長い闘病が待っており、医療コストを肥大化させる原因にもなっている。しかし、現代のテクノロジーを使って定期的に検査をすれば、脳の病気のかなりの部分は大事になる前に治療できる。それが、知久先生が予防医療に転じた理由だという。

3万~5万円で半日以上かかる従来の脳ドックは確かにハードルが高かった。「人間ドックのついでに」といっても10万円コースである。それが銀座のど真ん中で「30分1万7500円」。脳ドックのコンビニ化は日本の予防医療に新たな風を吹き込みそうだ。

大西 康之 ジャーナリスト

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おおにし やすゆき / Yasuyuki Onishi

1965年生まれ。愛知県出身。1988年早稲田大学法学部卒業、日本経済新聞社入社。欧州総局(ロンドン)、日本経済新聞編集委員、日経ビジネス編集委員などを経て2016年4月に独立。著書に『稲盛和夫 最後の闘い JAL再生にかけた経営者人生』『ファースト・ペンギン 楽天・三木谷浩史の挑戦』(以上、日本経済新聞出版)、『三洋電機 井植敏の告白』『会社が消えた日 三洋電機10万人のそれから』(以上、日経BP)、『ロケット・ササキ ジョブズが憧れた伝説のエンジニア・佐々木正』(新潮社)、『起業の天才! 江副浩正 8兆円企業リクルートをつくった男』などがある。

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