暴言・マジギレ上等、高学歴モンスターの正体 豊田真由子元議員を例に、精神構造を分析

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また、豊田氏が告白記事で〈(『週刊新潮』に)「秘書が100人辞めた」と書かれていますが、お辞めになられたのは公設・私設あわせて15名程度です〉と述べたことについても、元秘書の1人が、「私が秘書をしていたのは2カ月ほどですが、その間にいた、私を含めた5人の秘書全員が今はいません」と証言している。別の元秘書も、「私が見た範囲では、半年で20人は事務所を辞めています」と証言している。

こうした証言が事実とすれば、豊田氏は5年近く衆院議員を務めていたのだから、「秘書が100人辞めた」というのは決して誇張ではないと思われる。それでも、豊田氏は、あくまでも週刊誌報道を否認し続けることによって、難局を乗り切ろうとしたわけである。

自分の主張に対して元秘書をはじめとする周囲の人々が反論するかもしれないとか、“嘘(うそ)つき”と非難されるかもしれないとは考えなかったのかと、首をかしげざるをえない。もっとも、自分にとって都合の悪い事実を突きつけられると、とりあえず否認するのが人間という生き物である。

というのも、否認は、アメリカの精神科医、エリザベス・キューブラー・ロスが見抜いているように、「不快で苦痛に満ちた状況に対する健康的な対処法」にほかならないからだ。否認には、「予期しないショッキングな知らせを受けたときにその衝撃をやわらげる」機能がある。したがって、困難な現実に直面すると、最初は誰でも多かれ少なかれ「否認によって自分を落ち着かせ、時間が経(た)つにつれ、別のもっと穏やかな自己防衛法を使うようになる」(『死ぬ瞬間―死とその過程について』)。

否認は一時的な自己防衛にすぎない

重要なのは、否認はあくまでも一時的な自己防衛にすぎないということだ。時間稼ぎと言ってもいいかもしれない。ところが、中には、ある程度時間が経っても、否認し続けようとする人がいる。こういうタイプは、豊田氏のような高学歴エリートに比較的多いように見受けられる。

これは、3つの理由による。まず、高学歴エリートほど失うものが大きく、喪失不安が強い。それゆえ、自己保身のために否認し続けようとする。豊田氏も、暴言や暴行の事実を認めてしまうと、議員辞職に追い込まれ、自分自身のプライドを支えていた衆院議員の肩書を失うのではないかと危惧(きぐ)した可能性が高い。

また、自己愛の傷つきを恐れるあまり、目の前の現実をどうしても受け入れられず、錯誤に陥りやすい。ときには、「~だったらいいのに」という願望をあたかも現実のように思い込む「幻想的願望充足」の状態になることもある。そのため、否認し続けると、かえって状況が悪化しかねないのに、それを認識できず、合理的な判断ができなくなる。

さらに、なまじ頭が良く、弁も立つだけに、否認し続けていれば周囲も信じてくれるはずと思い込みやすいことも重要な要因だろう。つまり、自分自身の能力を過信しているからこそ、否認し続けるのだ。もっとも、それがかえって怒りや反感を買うことは、豊田氏を見れば一目瞭然である。

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