「ソフトウエアのテスト」が重要度を増す理由 SHIFT社長にロングインタビュー
丹下:本当に、それまでは失敗ばかりでしたよ。2006年に携帯電話のナンバーポータビリティがスタートした際には、「位置情報を活用したビジネスが絶対に当たる!」と確信していました。そして、そのサービスのローンチまでこぎ着けたところで、2週間後にDeNAからモバゲーが出て、その瞬間に完敗したと悟りました(笑)。
攻めの人材採用で大型案件を続々と獲得
小林:ビジネスが軌道に乗り始めたのはいつ頃からですか?
丹下:2016年に、ある小売の大手企業の基幹システム刷新に当社が参画し、高く評価していただいたのが大きなきっかけですね。僕は大きなチャンスが到来したと思ったので、人材紹介会社に知識と経験が豊富なエンジニアやプロジェクトマネージャーを集めてもらうことにしました。対象としたのは、大手IT企業で100億円以上の開発プロジェクトを手掛けた実績のあるトップ100名です。そして、彼らを含め、半年後には42名のハイスキル人材がSHIFTに所属することになりました。
小林:思い切って経営資源を投入し、大きな勝負に打って出たわけですね。
丹下:そうです。そのコストがかさんで2017年上期は業績の下方修正を余儀なくされましたが、この採用に投じた2億円は、彼らの活躍で20億円の案件獲得につながりました。優秀な人材をそろえたことで、金融機関をはじめとする大手企業からも受注が相次ぐことになったのです。
小林:なるほど。その攻めの一手が、取材の冒頭でもおっしゃっていた戦略につながっていったわけですか。つまり、最終段階でソフトの不具合を発見するテストだけにとどまらず、その上流の工程で発生するバグ(プログラム上の欠陥)を未然に防ぐためのコンサルティングサービスに注力していくうえで、強力な戦力を獲得したということですね。
丹下:「ビジネスとは煽りである」というのが僕の持論で、当初からそういった大きな仕事に結びつけていくことを狙って、積極的に仕掛けて種を蒔いてきました。これまではわずか6名の営業スタッフでこなしてきましたが、大型案件が増えてきただけに、今後は1000名規模の営業体制を築き上げたいと考えています。さらに、予定されている開発案件に関する情報を網羅的に集め、その中でこれぞと思うものを当社が初期段階から関わっていく戦略を確立したいですね。それに、エンジニアのデータベースも作ろうと思っています。
小林:私が認識している限り、競合他社はそのような上流の工程まで攻めていませんよね?
丹下:世界的に見ても、そこまでやっている競合はドイツのSAPをテストしている会社ぐらいしか思い当たりませんね。だけど、本当は初期段階から、テストの観点も踏まえて開発を行ったほうがクライアントの負うリスクが軽減されるのは明らかです。