「ソフトウエアのテスト」が重要度を増す理由 SHIFT社長にロングインタビュー
小林:他のテスト会社では非正規社員の占める割合がかなり高いのに対し、御社では逆に正社員が多い。競合他社はもっぱら非正規社員にテストの実務を依存しており、その点でも御社は異色ですね。
丹下:テストの会社だと思うとそうかもしれませんが、SI(システムインテグレーター)として捉えれば違和感はないでしょう。当社では、正社員として本部から現場を指揮するエンジニアの占める割合が高くなっています。
ソフトウェア提供のボトルネックを解消する
小林:そうしますと、御社と完全に競合するのはいわゆるテスト会社ではなく、アクセンチュアやIBMといったSIになってくるわけですか?
丹下:中途採用においてもバッティングするのは、そういった大手SIですね。ただ、SI業界は開発することに終始していて、テストも含めた包括的な戦略のほうには目が向けられていません。それに、SIが抱えているエンジニアたちはテストをやりたくて組織に属しているわけではないのが現実です。99%の確率で正常に動作すると信じて自作したプログラムを、開発期間におけるせいぜい2〜3割の時間を充ててテストしているだけにすぎません。
小林:テスト特化型の会社に対しても、SIに対しても、競争優位性を構築できているということですね。
丹下:経営者からすれば、SHIFTに頼んだほうがコスト的に安い。現場の開発者には、「僕たちの仕事を楽にしてくれて助かった」と感謝してもらえる。それが当社の強みです。その一方で、当社の社員の年収にもこだわっています。30年間当社で働ける人に対しては常に年収1500万円以上を保ち、子どもを私立の大学に通わせられるという待遇を死守したい。そして、「○○銀行のシステムが正常に動いているのはお父さんが関わったからだよ」と子どもに自慢してもらいたいのです。
小林:ソフトのテストという領域は、グローバルに見てどのような点からさらに付加価値の向上を追求できるのでしょうか?
丹下:まずはBPR(業務改革)よりももっと直接的に、ソフトウェア開発のコスト削減や生産性の向上を追求することですね。もう1つは、テスト専門会社の強みを生かして技術やノウハウの集約化を進め、クライアントが属する業界に応じたベストソリューションを提供することでしょう。
例えば、現在、アプリケーションソフトは世界で年間1万3000もの数がローンチされていますが、そのうちでビジネスとして成り立っているのは、せいぜい上位100にすぎないでしょう。つまり、残りの1万2900作品は作っては捨ての繰り返しとなっているのです。