日産、ノートe-POWER好調に潜む喜べない事情 売れている背景には消極的な要因も

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(3)ほかに購入する日産車がない!?

ノートe-POWERを購入したユーザーが、すべて大喜びで買ったわけではない。「ほかに買いたい日産車がない」という消去法的な理由で選ばれることも多い。

背景にあるのは、日産がそろえる商品の変化だ。「ティーダ」はかつて5ナンバーサイズの上質なコンパクトカーで高い人気を得ていたが、日本仕様は1代限りで廃止された。同様にコンパクトセダンの「ラティオ」、コンパクトワゴンの「ウイングロード」も廃止されている。「シルフィ」の従来型(ブルーバードシルフィ)は、排気量1.5~2Lエンジンを搭載する5ナンバーサイズのセダンで広い室内を備えたが、今は3ナンバー車で選びにくい。

ミニバンの「ラフェスタ」は、初代モデルは日産が開発と製造を行ったが、2代目はマツダ「プレマシー」をベースにしたOEM(相手先ブランドによる生産)車になり、先ごろプレマシーと併せて廃止された。比較的コンパクトなSUVの「デュアリス」も終了して久しい。

さらにLサイズモデルにも触れると、SUVの「ムラーノ」と「スカイラインクロスオーバー」、ワゴンの「ステージア」「スカイラインクーペ」などが比較的直近に廃止された。このように手頃な5ナンバー車を中心に、近年では日産車の選択肢が大幅に減っている。

現行日産車にも課題が多い

現行日産車にも課題が多い。かつて人気の高かった「キューブ」は発売から9年以上を経て、緊急自動ブレーキも装着されず人気を低迷させる。「ジューク」も売れ筋カテゴリーのコンパクトSUVだが、発売から約7年を経て、緊急自動ブレーキは追加したが売れ行きを下げた。Lサイズでは「フーガ」が発売から8年を経て、人気を大幅に下げている。

このように今の日産車は車種数が減り、存続しているモデルも設計の古さが目立つ。国内で堅調な日産車は、安全装備が相応に充実してe-POWERを加えたノート、同じくe-POWERを加えた売れ筋ミニバンの「セレナ」、軽自動車の「デイズ」と「デイズルークス」、強いて挙げればSUVの「エクストレイル」程度だ。

こうなるとティーダやキューブをはじめとして、多くの日産車ユーザーが行き場を失う。そこにノートe-POWERが発売されたから売れ行きが伸びた。「普通のノートでは物足りない」と感じていた1.5~2Lエンジン搭載車のユーザーも、ハイブリッドのe-POWERなら満足できる。

表現を変えると、ノートe-POWERの好調な売れ行きは、「従来の日産車ユーザーが抱える不満のあらわれ」でもあるだろう。日産が気持ち良く乗り換えられる新型車を提供しないから、多くの日産車ユーザーがノートe-POWERを選んで、結果的にヒットした。「e-POWERで販売が好調!」と喜べる状況ではない。

従って2017年の国内における日産のメーカー別販売ランキング順位は、トヨタ/ホンダ/スズキ/ダイハツに次ぐ5位であった。2018年の1~2月はホンダに次ぐ3位に浮上したが、4位のスズキとの差は約4000台だから、今後順位が入れ替わる可能性は高い。

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