日産、ノートe-POWER好調に潜む喜べない事情 売れている背景には消極的な要因も

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ちなみに海外で売られる「マイクラ」や2代目「ティーダ」は、全幅がワイドな3ナンバー車だが、全長は比較的短い。販売戦略次第では日本でも売れる見込みがあるが、今の日産は国内に対して冷やかだから導入されない。

今の状況を招いた根本的な理由は、日産にとって日本が従属的な市場になったことだ。日産の世界販売台数に占める国内比率は、三菱自動車が製造する軽自動車を含めても10%にとどまる。小型/普通車に限れば7%まで落ち込む。日産が海外中心のメーカーになり、国内市場の商品力が全般的に下がったから、先進的でコンパクトなノートe-POWERが登場すると過剰ともいえる注目を集めたわけだ。

ほかの車種の売れ行きがノート以上に落ち込んでいる

(4)他メーカー車の売れ行きが低迷

2018年に入ると、ノートは小型/普通車の登録台数ナンバーワンになったが、対前年比は1月が約12%、2月も7%ほど減った。ノートにe-POWERが加わったのは2016年11月だから、1年前には既に発売されており、2018年は減少に転じている。

それなのに小型/普通車の1位になれた理由は、ほかの車種の売れ行きがノート以上に落ち込んだからだ。2位のトヨタ「プリウス」は2015年12月に発売され、2016年は暦年で対前年比が約2倍の195%に達したが、2017年は65%まで下がった。

現行プリウスはフロントマスクやリヤビューの形状が奇抜で、ユーザーによって好みが分かれる。しかもプリウスの発売から約1年を経過した2016年12月に、同じトヨタからプリウスと共通のプラットフォームやハイブリッドシステムを使うSUVの「C-HR」が発売された。C-HRの外観も個性的だが、趣味性の強いカテゴリーのSUVだから、見栄えはプリウスよりも馴染みやすい。価格はC-HRが少し高いが、売れ行きは堅調で、プリウスはユーザーを奪われて登録台数を下げた。

3位は同じトヨタの「アクア」で、コンパクトなハイブリッド専用車だ。ノートe-POWERのライバルだが、発売が2011年12月だから設計が古い。

以上のように、行き場を失った日産車ユーザーの乗り換え需要がノートe-POWERに集中する一方で、ライバルの売れ行きは下がり、ノートを小型/普通車の販売1位に押し上げた。

日産は、ノートe-POWERの好調な販売に胸を張れる状況にない。2年半にわたって新型車を投入しないなど、国内市場を軽く扱いながら、日産から離れずにノートe-POWERを購入してくれたユーザーに感謝したほうがいいぐらいだ。ユーザーをつなぎ留めた販売会社の尽力も極めて大きい。

ティーダやマイクラは先に述べたように3ナンバー車になったが、魅力のあるクルマであれば、国内でも相応に売れ行きを伸ばせる。得意のプロモーションは、ハイブリッドを電気自動車に置き換えることではなく、ティーダやマイクラのカッコ良さ、運転の楽しさなどの表現で発揮すべきだ。海外で売られる日産車を、ユーザーと販売会社の目線で厳選して、国内市場へ積極的に投入して欲しい。

日産は日本の自動車メーカーだから、国内のユーザーや販売会社をもっと信頼すべきだ。「なぜe-POWERが売れたのか」を冷静に考えれば、これから進むべき方向もおのずと見えてくると思う。

渡辺 陽一郎 カーライフ・ジャーナリスト

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わたなべ よういちろう / Yoichiro Watanabe

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまにケガを負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人たちの視点から、問題提起のある執筆を心掛けている。

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