2つ目は「キャンセルにより、その飲食店に具体的に発生した損害の金額」です。この具体的に発生した損害の金額は、飲食店側が主張するだけでなく、その主張の裏付作業も行う必要があるのですが、予約用の食材をほかのお客さんに使った場合や、冷凍保存が可能だった場合には、食材費の損害は減る可能性が高いです。
また、飲食店では、予約日時直前でのキャンセル連絡(いわゆるドタキャン)だけでなく、キャンセルの連絡自体をしない無断キャンセルも多いようです。無断キャンセルの場合は、飲食店側としてはそのお客さんが来るのか来ないのかわからないため、予約席や予約用の食材をほかのお客さんに使えない可能性が高くなります。そのため、ドタキャンによる損害よりも無断キャンセルによる損害のほうが、金額は高くなる可能性が高いです。
電話番号だけで「損害賠償請求」できる?
ただ、飲食店がキャンセルをした人または会社に対して損害賠償請求をしたという話はあまり聞きませんよね。
何十人、何百人といった規模の予約なら別でしょうが、数人規模の予約の場合、損害があったとしても、飲食店が予約をした人の情報として持っているのは「携帯電話番号」だけということがほとんど。予約した人の携帯電話番号から予約した人の氏名住所を調査して、文書で請求をして、支払ってもらえない場合に裁判をして……といった手順を踏むのは大変、という事情があるからだと思われます。
ですが、飲食店店主が、40人の宴会予約を無断キャンセルした人に対して13万9200円の損害賠償請求の裁判を起こし、3月9日、東京簡易裁判所がこの請求を認める判決を出しました(もっとも、被告は出席せず内容を争うこともしなかったようですが……)。
上記の裁判の事案では、飲食店店主より依頼を受けた弁護士が、弁護士法上の照会制度を使って、携帯電話会社から予約をした人の個人情報を取得しています。「弁護士会照会」とは、弁護士が依頼を受けた事件について事実関係の調査、証拠の収集などをするための方法の1つで、弁護士が所属する弁護士会に照会申出をして、弁護士会が審査を行ったうえで弁護士会が照会先に照会をするという制度です。
たいていの飲食店は、予約をした人の氏名と電話番号をきちんと保存しています。また、予約をした人とキャンセル料(キャンセルによる損害額)についての約束を、メールなりサイトを通じてするようにしている飲食店も増えているようなので、今後は、上記のような裁判が増えてくる可能性があります。
もし急な体調不良やトラブルなどでキャンセルせざるを得ない場合に早めにキャンセル連絡をすることは、モラルの点だけでなく法的に見た場合でも、飲食店・予約キャンセルをした人どちらにとっても傷が少ない、ということになりますね。
なお、予約のキャンセルは飲食店側からすれば腹が立つものだと思いますが、キャンセルをした人のフェイスブックやツイッターのアカウントを突き止め、そこに「この人がうちの店で無断キャンセルをしたひどい人です」といった書き込みをすることは、名誉毀損に問われたり、個人情報保護法違反に問われたりする可能性もあるので、やめておきましょう。
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