民事再生法適用を申請した新井組、社長は記者会見で「外部環境の悪化」を繰り返す

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民事再生法適用を申請した新井組、社長は記者会見で「外部環境の悪化」を繰り返す

「実直に残念です。地域のみなさん、すみませんでした」ーー。兵庫県を地盤とする中堅ゼネコンの新井組(東証一部上場)は8日、東京地裁に民事再生法の適用を申請し、同日付で保全命令を受けたと発表した。子会社と合わせた負債総額は約450億円。同日に行われた会見の席上、酒井松喜社長は目を赤く潤ませながら、深々と頭を下げた。
 
 会見では、酒井社長は何度も同じ言葉を口にした。「外部環境が急激に悪化した」「ここにきて環境がゴロっと変わった」「結果として外部環境の悪化が影響して・・・」。新井組の倒産は、マンション建設主体の経営が裏目に出た典型例だ。“引き金”となったのは、米国のサブプライムローン問題を起因とする金融波乱が招いた新興デベロッパーの相次ぐ破綻である。

バブル崩壊とともに財務内容が悪化した新井組は、2002年に金融機関から多額の債務免除を受けて再建を図ってきた。官庁工事が減少をたどる中、軸足を移していったのが工事量を確保しやすい民間マンション建設。直近では、受注高736億円のうち300億円がマンション工事だった。

ただ、中堅ゼネコンにとって、マンション建設は決して条件がよくない。マンション業者からゼネコンへの支払い条件は、いわゆる「テン・テン・パー」。着工時に工事代金の1割、中間時に1割、引き渡し時に残りの8割が支払われるのが通例だ。下請けへの支払いを建て替える必要があるゼネコンにとって、負担は大きい。

そこに、昨年秋以降の不動産市況の悪化が直撃した。新興デベロッパーの相次ぐ破綻により、工事代金の滞納や焦げ付きが発生。この信用不安や同社の株価低迷(10月に入り同社の株価は30円以下に)を理由に、資材業者などが現金での支払いを要求するようになった。また、金融収縮やマンション不況の影響で、金融機関に駆け込んでも「手形が割れなくなった」(酒井社長)。さらに、昨今の資材費高騰が追い討ちをかけた。

酒井社長が民事再生法申請を決断したのは、10月1日。10日に支払い期限が迫っていた51億円の資金が工面できていなかったが、メインバンクの三井住友銀行から「追加融資は不可能」との通告を受けたためだ。資本・業務提携先であるNISグループ<8571>からも、資金援助をあえなく断れらたという。

酒井社長は、「経営責任は痛切に感じている。早急にスポンサーを見つけ、再建のメドが立つまで現在の取締役の体制を継続する。(メドが立てば)私は辞任したい」と語る。しかし、不動産不況が取り巻く状況下、スポンサー探しは難航必至であろう。

東京、大阪の両証券取引所は、同社株を11月9日付けで上場廃止することを決めた。
(梅咲 恵司 =東洋経済オンライン)

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