佐川氏証人喚問の中身があまりにも酷すぎる 誘導質問、粗い質問、そして答弁拒否…
それにしても、些細な事項に関する質問に対してでさえ、佐川氏は「答弁拒否」を繰り返し、頑なな態度を崩さなかった。昭恵夫人の名前を見た時期ですら答えず、補佐人が与党関係者と連絡をとっていたか否かについても、「刑事訴追を受ける可能性がある」と答弁を拒否した。これでは証人喚問を行った意味がない。
証人喚問で明らかになったことの中にも、細かな矛盾は数多い。たとえば佐川氏は昨年、理財局長として国会で答弁に立つ際に、森友学園問題について「勉強した」と述べている。だが、連日の野党の相次ぐ質問に備えて「勉強した」とするなら、契約締結時に理財局長だった迫田英典氏に話を聞かなかったのは不自然だ。迫田氏は佐川氏の前任者で、共に1982年旧大蔵省入省の同期。よほど仲たがいしていない限りは、容易に連絡を付けられる相手のはずだ。
細かく矛盾を突く戦法もあったはずだが…
もっとも証人喚問で真実が明らかにされなかったのには、野党にも責任がある。佐川氏のこれまでの答弁を細かく調査してその矛盾を突けば、なんらかの成果が出たかもしれない。今回の証人喚問では、そのような丁寧さを欠いていた。
たとえば民進党の小川敏夫参議院議員だ。元検事の小川氏はその鋭い追及力で「国会の鬼検事」との異名を持ち、疑惑追及ではエース級と言われている。ところが今回は、いまいち切れが悪かった。佐川氏の答弁に関して官邸と協議があったのではないかと追及したが、いとも簡単に佐川氏にかわされている。
また籠池泰典元森友学園理事長からの依頼を受けて“昭恵夫人付き”だった谷査恵子氏が田村嘉啓国有財産審理室長(当時)に問い合わせた件について、小川氏は谷氏からのなんらかの「関与」を引き出そうとしたが、佐川氏は「田村氏は谷氏から電話を受けたのみで、谷氏が籠池氏に送ったファックスには実務的な間違いがある」と答弁。籠池夫妻が田村氏と面会した時に録音したテープの内容についても、佐川氏は逃げ切った。
共産党の小池晃参議院議員にも、証言拒否で乗り切っている。そもそも佐川氏にとって、もっとも手ごわい相手は共産党だろう。証人喚問の「前夜祭」とも言える前日の参議院予算委員会では、若手のホープである辰巳孝太郎参議院議員が質問に立った。午後の証人喚問では宮本岳志衆議院議員が立つ予定だった。そして午前の小池氏の質問は、そのクライマックスだったといえる。
だが小池氏の持ち時間はわずか12分で、核心への追及には少なすぎた。質疑は2度にわたって中断され、佐川氏は「訴追の恐れがある」として逃げ切った。
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