楽天イーグルス「観客増で営業黒字化」の背景 ファンがまた来たいと思う仕掛けがある

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親会社の楽天から受け取っているスポンサー収入は5億円だけ。逆にシステム使用料を支払っている。

数々のアイディアのお手本はメジャーだ。繁閑に合わせてチケット価格を変えるフレックスプライスや、発売後需要動向に合わせて価格を変える、ダイナミックプライシングもメジャーから学んだ。

イーグルスは毎年新人職員をメジャーの球場視察に出し、新たなサービスの考案につなげている。球場入口近くに設置された、本日のメンバー表と、そこに広告スペースを設けるアイディアも新人による視察の成果だ。

立花陽三社長は球団創設9年目でチームを日本一に導いた立役者の一人だ(編集部撮影)

球団社長の立花陽三氏も可能な限り、ウィンターミーティングを訪れている。

メジャーのウィンターミーティングは、メジャー30球団と160を超すマイナーリーグの関係者が集まるイベントで、選手のスカウトの場であるとともに、スポーツメーカーや分析機器メーカーから食品会社、グッズ開発会社など、プロ野球興業に係わるありとあらゆる業者がブースを出す、一大コンベンションの場でもある。

メジャーのGMクラスでも、聞けば気軽にいろいろなことを教えてくれる」(立花球団社長)が、さすがに英語でのコミュニケーションが通訳なしでできないと厳しいからか、「スカウトクラスではなく球団の社長や役員レベルで日本から来ている人は少ない」(同)という。

選手にも球団経営を理解

他球団にない強みは「選手が球団経営というものを理解していること」(立花球団社長)だという。球団の使命は“使えるお金”を稼ぐこと。収入が増えれば選手に年俸の形で報いることができ、戦力を向上させる設備投資も可能になる。

そして収入は、稼いだお金を再投資し、サービスを向上させてリピーターを増やすことで増え、観客が増えることでスポンサー収入も増やせる。

「球団職員の後ろにファンやスポンサーがいるのだということを、イーグルスの選手たちはよく理解しているし、新たに入団してくる選手には理解させる努力もしている。だから球団職員と選手とのコミュニケーションは密」(立花球団社長)だという。

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