楽天イーグルス「観客増で営業黒字化」の背景 ファンがまた来たいと思う仕掛けがある

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エコ球場を標榜しているだけあり、小学生以下を対象にジェット風船の残骸をシールと交換しているので、7回裏前のジェット風船タイムが終わると、スーパーのポリ袋を持った子供が一斉に残骸を拾い歩く。

大人も触発されるらしく、ゲーム終了時点で床に落ちているジェット風船の残骸はほぼゼロだ。ゴミもほとんど残っていない。

2015年には球場外周部に660㎡のグッズショップ「チームショップ」を新設。フードも全店が異なるメニューを提供しており、球団職員が毎年テナント選定をしている。

ゲームを盛り上げる演出も豊富だ。応援歌や選手の登場曲、チャンステーマなどの歌詞を、私設応援団の動きを予想しながらタイミングよくスクリーンに表示。拍手を促すクラップ動画を球界で初めて導入したのもこの球団である。

拍手を促す「CLAP」の動画を映すスクリーンともう1枚のスクリーンは連動していた(筆者撮影)

2016年にはパナソニックのシステムを導入し、2枚の大型スクリーンを連動させた動画の表示もできるようになった。同じ2016年には、観覧車とメリーゴーラウンドを外野レフトエリアに設置し、ミニ遊園地「スマイルグリコパーク」を新設。長時間の観戦に耐えられない小さな子供の遊び場を提供した。

ウィンターミーティングでメジャーのノウハウ吸収

観戦の都度チケットを購入して来場する観客からの収入をフローの収入とすれば、ストック収入と言えるのが年間シート。座席の種類(座種)は球界最多を誇る39もあるが、このうち半分以上がネット裏に広がる高価格席だ。

キャッチャー目線で観戦できるプレステージ・プラチナの座種(2018年3月、筆者撮影)

キャッチャー目線で観戦できるプレステージ・プラチナをはじめ、ロイヤルボックスやVIPシートなど、1席で100万円以上、1室で1000万円する席が開幕前に完売、一部はキャンセル待ちになっている。

ほとんどの座種が年間シートとして購入可能で、「ネット裏を中心に、開幕前に球場全体の3割強の座席が年間シートとして売れている」(球団)という。

スポンサー収入を得るためのアイディアもユニークだ。全試合にゲームスポンサーが付き、座席の背もたれも広告スペース。ベンチ前とホームベースの後ろは球場のネーミングライツとセット、場内の案内・誘導スタッフにはイエローハットのベストを着用させ、ゴミステーションは森トラスト、スマイルグリコパークはその名の通り江崎グリコがスポンサーだ。

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