「じゃあ、紙に書いてみたら? ぼくが聞いてあげるよ」
息子お気に入りのぬいぐるみを司会にしたてて、いつもとは違う2人(プラスぬいぐるみ)の会議がそっと始まった。
大きめの紙を出し、「何が嫌なのかここに書いてみて」そう(ぬいぐるみで)促すと、最初は渋々だった息子が何かを書き始めた。ミミズのような字で「○○○ができない」というところだけ読める。
ついに息子が口を開いた
「何ができないの?」なるべく何でもないような顔で、ぬいぐるみが問う。
「怒っちゃうと言いたいことがあるけど、言えない。普段から言いたいことがあっても、なかなか本当のことは言えない。そういう自分がしんどい」
息子は学校では楽しそうにしているが、家ではよく癇癪を起こす。不満に思っていることがあるだろうに、それを言葉にして正直に親に言えば怒られそうだから言えずふてくされた態度をとって、怒られる。その連鎖がいいわけがないとは思っていた。これは何か息子からの「聞いてほしい」のメッセージだった。
「会議では何を言っても誰も怒らない」「言いたいことは最後まで聞く」。
そのルールがどこかで息子の気持ちを、変えたのかもしれない。その日、息子が書いたメモはほとんどが読めなかったが、ぬいぐるみに向かって、息子は自分の気持ちをとうとうと話し出した。学校や家で腹が立つことがあった時に、何も言えずにうちにこめてしまう自分の気持ちを30分ほど話した。
この頃から、家族会議の場でも息子の態度が変わったと思う。「野球でいいあたりを打てたこと(がうれしかった)」「野球に行く時間を(お父さんが)間違えちゃっただけなのに、すごく怒っちゃった(自分が)のが(自分で)嫌だった」など、少しずつ具体的な発表ができるようになっていった。
最初はわけがわからないようだった娘も、「本当はおばあちゃんに会いたい」「下関市(祖母が住む)に行きたい」などと、1年前まで同居をしていたが下関に移住してしまった祖父母に会いたいという思いを、口に出すようになってきた。
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