それでも、また夢は叶わなかったことは確かである。
昨年の敗戦後、池江師の第一声は、「日本の皆さん、申し訳ありません」だった。ゴール手前で斜行し、クビ差で敗れたなんともいえない悔しさが残っていた。だが、今年は違った。「勝つまで、絶対に(凱旋門賞に)来ます。また強い馬を育ててきます」。
「勝つまで」「2年連続2着でも」「また何度でも挑戦し続ける」と、決めたわけだ。
「『失敗』は成功するまで続ければ、『成功』に至るプロセスになる」
これは、筆者の大好きな言葉だ。本音を言えば、凱旋門賞に池江師が勝ち、その祝福の言葉として使いたかった。しかし、現実はうまくいくことばかりではない。
ビジネスもスポーツも、すぐに世界一になることなどできない。世界一になるには、数多くの失敗が必要だ。2年続けての敗戦も、池江師が次の凱旋門賞か、次の次で勝つためのプロセスだったことを、いずれわれわれは知ることになるはずだ。
余談だが、今回勝ったトレヴの調教師であるC・ヘッド氏は64歳。女性調教師として初めて凱旋門賞を制してから、今回が実に34年ぶりの勝利だった。毎年挑戦しては挫折しての繰り返しだったわけだ。現地フランスのトップ調教師ですら、勝つのはここまで難しいのだ。
年内でオルフェーヴルは引退予定。残念ながら、もう同馬での凱旋門賞挑戦は叶わない。だが、今回の失敗を糧に、また新しい決断と対策を重ねた結果として、「オルフェーヴルの敗戦があったからこそ、ついに、この世界一が実現した」。そんな池江師の言葉を聞ける日が、きっと来る。
そう、勝利するまでやり続ければ、敗戦も一つのプロセスになるのだ。優勝馬トレヴの馬主であるカタール王族が馬車に乗る姿を見つつ、この言葉を現地から皆様にお届けして、締めくくりとしたい。
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