そして社長が1冊目に選んだ題材は政治家・田中角栄だった。ロッキード事件の判決が出るのに合わせる形での出版になった。
作っている人が見える本
教材は作っていたが、商業出版においては素人だった。
「まずは10年分くらいの田中角栄が載った雑誌の記事をコピーして集めてきて、内容ごとに段ボールに仕分けしました。何箱にもなりましたね。その資料をテーマ毎に仕分けて見出しをつけ、学生などに執筆してもらい、自分が手直ししました。
レイアウトもやり方がわからないから、レイアウト用紙に直接のりで文字を貼っていく。マジックで直接説明を書いたり、写植がちょっと剥がれていても気にしなかったり、とにかく手作りで自由に本を作りました」
文字組みを間違えたページは、全部社長がページをハサミで切って、貼り直して仕上げた。それだけで4日間の徹夜仕事になった。
そうして『田中角栄 最新データ集』は完成した。この本は、それほど売れなかったが、以後データ集をシリーズ化してコンスタントに売れた。
社長はこの本が受けた理由は「作っている人が見える本」だったからではないか?と考える。
「こういう手作りな本はなかったから、読者が面白がってくれたんじゃないかな? プロが楽して作った本は、見た目がきれいだけど面白くないんですよ。読みたくならないですね。
素人がどうやったらいいかわからない状態からあがいて作った、かっこよくない本のほうが絶対面白いんですよ」
3冊目に作ったのは『悪の手引書』という本だった。殺人の方法、ちかんのやり方、などが解説されたマニュアル本だった。
「これも膨大な量の資料を集めて、手作りで作りました。犯罪白書の面白版ですね。今見ると小学生が作ったようなレイアウトです。三塚博自民党政調会長が国会で取り上げてくれてドッと売れました。累計20万部くらいは売れたんじゃないかな?」
その後、同じルーチンで『恋の教科書―女のコ攻略の手引書』など出したが、『悪の手引書』がいちばん売れた代表作になった。
この後、たくさん売れた本の類似本を出して、徐々に売れなくなっていく、というパターンを繰り返すことになる。
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