30歳「発達障害」を妻に初めて話した彼の安堵 2人の子どもへ「遺伝したならしょうがない」

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つねに頭の中にあった雑音や考え事がなくなり、「無」が増えてクリアになった。今まで悩んでいたのは発達障害が原因だったことがわかり、割り切れるようになったため生きづらさも軽減した。ところが、職場では発達障害が完全に理解を得ているとは言えない。

「以前、上司に『発達障害かもしれない』と相談したときは『ほかにも仕事ができない人はいるし、障害のせいにするのもなぁ……』と言われました。職場に産業医のカウンセラーの方も来ているのですが、ある日偶然上司とカウンセラーが発達障害の話をしていて、そのときも『仕事ができないのを発達障害のせいにする人も多い』と言っていました。ただ、きちんと診断が下りてからは仕事の量や負担は軽くしてくれました」(西岡さん)

発達障害は遺伝の可能性がある。西岡さんの子どもたちに影響はないのだろうか。

「上の子は3歳、下の子は3カ月でまだ小さいので何とも言えないのですが、僕も遺伝の可能性はネットの記事を読んで知っていました。それを妻に伝えると、『遺伝したならしょうがない。うまく付き合っていけるようサポートしないとね』という結論にいたりました。もし、症状が出てきたら病院で診てもらえばいいし、あまり深く悩まないほうがいいのかなと思います」(西岡さん)

当事者になって初めてわかる

西岡さんは今後の目標も含めてこう続ける。

「自分もそうでしたが、実際に当事者になってみないとわからない部分は多いです。それこそうつ病も、自分が発症するまでは『うつって大変そうだな』とか『職場にうつの人がいたら仕事の効率が落ちてしまう』と思っていました。でも、当事者になってみて初めてうつ病の人の気持ちが理解できました。どんなにうまく言葉にして伝えたとしても、完全に理解してもらうのは難しいと思うんです。

発達障害もそうです。今はまだうつで気分の浮き沈みが激しいので、もう少し良くなったら、発達障害当事者同士で集まるイベントや、発達障害について発信できるセミナーなどに参加したいです」(西岡さん)

以前、少し話をした当事者の方は、交際していた彼女に振られるのを覚悟で発達障害であることを伝えたと言っていた。しかし、実際は振られることなくその後結婚している。

西岡さんもきっと、妻に発達障害を告白するのに多大な勇気を要したはずだ。信頼し、自分を認めてくれているパートナーに障害であることを伝えるのは恐怖がある。西岡さんの場合は妻の理解を得られたが、そうでない場合を考えると、さらに絶望の淵へ追いやられただろう。

今後も、生きづらさを感じている当事者の訴えの橋渡しをしていきたい。

姫野 桂 フリーライター

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ひめの けい / Kei Himeno

1987年生まれ。宮崎市出身。日本女子大学文学部日本文学科卒。大学時代は出版社でアルバイトをしつつヴィジュアル系バンドの追っかけに明け暮れる。現在は週刊誌やWebなどで執筆中。専門は性、社会問題、生きづらさ。猫が好きすぎて愛玩動物飼養管理士2級を取得。趣味はサウナ。

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