ヒトが「ネアンデルタール人」を絶滅させた ヒトより脳も大きく、ガッシリしていたのに

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──ネアンデルタール人もヒトも食人の痕跡が残っていますね。

はい。飢餓の極限状態で食人の犠牲者となったネアンデルタール人12人の骨は、脳や骨髄目当てにたたき割られ、石器で肉を剥ぎ取られた傷が残っていました。

ネアンデルタール人絶滅の主な原因は、寒冷な環境とヒトの進出でした。ヒトは骨で針を作り、寒さをしのぐ毛皮服を作って防寒、何でも食べ、きゃしゃな体で広範囲を動き回る。投槍器を使い狩猟技術も高かった。一方ガッシリ体形のネアンデルタール人は基礎代謝量だけでヒトの1.2倍、動き回るには1.5倍のエネルギーを要した。力は強いけど燃費が悪いので、移動範囲は狭まり獲物も少ない。ヒトが自分たちの土地にズカズカ入り込んできて獲物を横取りしていった。

動物の全重量の10%をヒトが占めている

──未来の人類は私たちヒトをどう特徴づけるんでしょう。

南極まで行っているし、本格的に世界中に広がった。それから異常に数が増えた種ですよね。現在、動物の全重量の10%をヒトが占めていて、そんなに多い種は全人類史上初めてです。

『絶滅の人類史―なぜ「私たち」が生き延びたのか』 (更科 功 著/NHK出版新書/820円+税/249ページ)書影をクリックすると、アマゾンのサイトにジャンプします

──え、たったそれだけ?

現代のITや宇宙への進出など目覚ましい文明の発展は、記録はされるでしょうけど、ヒト30万年間のうちテクノロジーの進化はたった200年。生物学的な定義としては「地球中に広がった種」となるんじゃないですかね。

ほかの種に比べ個体が弱いから集団で行動し、協力関係がなお強まった。集団の中で初めて一夫一婦制を形成したことも特徴に入るかな。それに将来、考えることをAI(人工知能)に任せていくようになれば、脳はさらに縮小する可能性がある。脳の大きさのピークはネアンデルタール人なので、「ヒトは脳が縮小していった種」というのも加わるでしょうね。

──次の人類はどのように出現すると思いますか?

何らかの断絶が起きないとヒトから別種が分かれることはない。普通に考えて、1万年後、ほかの惑星に移住した集団が別種の人類になる可能性がいちばん高いのかな。

中村 陽子 東洋経済 記者

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なかむら ようこ / Yoko Nakamura

『週刊東洋経済』編集部記者

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