ノーベル物理学賞受賞者「いま科学が危ない」 重力波の直接観測に成功した科学者の願い
[マサチューセッツ州ケンブリッジ(ロイター) ]- 10月3日、重力波を探知して天文学の新時代を切り開いたとしてノーベル物理学賞を受賞した米国の科学者2人は、「この受賞が注目されることによって政治的主張を重視して科学的総意を軽視する米国の傾向が反転していくことを望む」と語った。
マサチューセッツ工科大学とカリフォルニア工科大学の3人の研究者が、アルベルト・アインシュタインによって予測された空間と時間における波紋の存在を確認する半世紀の業績のためにノーベル物理学賞を受賞した。
科学的知見を拒絶する国民が増えている
医学賞に続いて米国の科学者がノーベル賞を2日連続で受賞する慶事は、ドナルド・トランプ大統領の政権が科学研究のための予算をカットし、気候変動に懐疑的姿勢を見せている最中に起きた。
トランプ大統領の姿勢は、多くの米国民の間に浸透する懐疑を反映している。気候変動は人為的なものなのかという懐疑から、ワクチンの安全性の問題に至る懐疑まで、科学的知見を拒絶する国民が増えているのだ。
「われわれは実証に基づく合理的推論が普遍的に受け入れられないばかりか、実はそれが危機的状況にある時代に生きている。これに私は苦悩する」と、火曜日に名誉を授かったチームの1人であるマサチューセッツ工科大学物理学部のレイナー・ワイス名誉教授は語った。
「この受賞が自分ではなく他の人々を立ち上がらせ、これに耳を傾けろ!と言わしめるのなら、とても価値のあることだ」と、110万ドルの賞金の半分を受け取るワイス名誉教授は電話インタビューで述べた。
カリフォルニア工科大学物理学部のバリー・バリッシュ名誉教授も、同様の懸念を漏らした。「何であれ、科学者、経済学者、化学者、物理学者、生物学者などをもっと真剣に受け止めさせるものは、人々がすべての事実に注意を払わないために物事が偏極してしまっている時代には、大変役立つと思う」と、バリッシュ名誉教授は電話で語った。