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米SF映画『ガタカ』で描かれている未来
1997年の米SF映画『ガタカ』は、ヒトの遺伝子操作が当たり前になった近未来を舞台に、人間の自由意思の強さを描く美しい映画だ。序盤にこんなシーンがある。
自然妊娠によって生まれた主人公は、生後すぐに、30代前半で心臓病によって死ぬ運命にあると宣告される。両親は次の子を「普通のやり方」で得ようと決める。体外受精ののち、確実に健康に育つ受精卵を選別して子宮に戻す方法だ。主な遺伝病の可能性がなく、目や髪の色もあらかじめ指定したとおりのいくつかの受精卵が候補になる。遺伝学者は、両親に性別を選ばせると、さりげなく付け加える。
「勝手ながら、早期脱毛、近視、アルコール中毒、中毒に対する脆弱性、暴力や肥満の傾向など、潜在的に有害な条件も取り除きました」
遺伝子操作で生まれながらに優れた知力・体力が約束された「適正者」とそうでない者が区別され、「不適正者」には職業を選ぶ権利すらない――。『ガタカ』の世界は、公開当時はまさしくフィクションだったが、20年後の今、そうとも言い切れなくなっている。
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