年1400万円のがん免疫薬が突きつける課題 「キイトルーダ」は第2のオプジーボになるか
高額薬価で話題になった小野薬品工業のがん免疫薬「オプジーボ」(一般名「ニボルマブ」)。そのオプジーボと同様のメカニズムを持つ薬(抗PD-1抗体)として2番手となる、MSD(米メルク)の「キイトルーダ」(一般名「ペムブロリズマブ」)が切除不能の肺がんに対して承認され、2月8日の中央社会保険医療協議会総会で薬価も決まった。
両者は投薬サイクルや投与量が異なるものの、先行するオプジーボがあるために「類似薬効比較方式」が採用され、1日当たりの薬価は3万9099円(20ミリグラム0.8ミリリットル・1瓶8万4488円、10ミリグラム4ミリリットル・1瓶41万0541円)と算定。仮に年間だと約1400万円だ。補正加算と外国平均価格調整は適用されなかった。MSDではピーク時の売り上げを年間544億円と見積もっている。
両者は似て非なる薬だが、その違いは何だろうか。
肺がんの薬として最初に使える
キイトルーダのオプジーボとの最大の違いは、切除不能な肺がんに対して、最初の抗がん剤治療(一次治療)の薬として承認されたことだ。オプジーボは最初の抗がん剤が無効になった後の二次治療以降にしか使えない薬である。
承認するための臨床試験(治験)では、無増悪生存期間(治療後にがんが進行または死亡するまでの期間)を有意に延長するとして、オプジーボを上回る可能性を示唆する結果が出た。しかし、慶應義塾大学の河上裕教授(日本がん免疫学会理事長)は、「2つの薬を比べる際には、がんの進行度など患者の状態をそろえて2グループに割り付けたうえで”直接対決”を行わないと、真の優劣はわからない」と評する。
使い方も多少異なる。いずれも「免疫チェックポイント阻害薬」といわれる種類の薬で、ともにPD-1という同じ分子を標的にしている。本来、生体には、がん細胞を攻撃する免疫機構が備わっているが、狡猾ながん細胞はこれを無力にする。その際に免疫にブレーキをかけるタンパク質が免疫チェックポイント分子(PD-1やCTLA-4)である。
免疫細胞の持つPD-1分子が、がん細胞表面のPD-L1という分子と結合すると、免疫は無力化される。そこで、がん細胞にPD-L1が多く現れている人ほど薬が効きやすいだろうとして、キイトルーダは、PD-L1発現が一次治療の場合は50%以上(二次治療では1%以上)ある人という条件付きで使用しなくてはならない。投与前にがん細胞の生検(がん細胞を直接採取して調べる検査)が必須になる。
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