ヒトが「ネアンデルタール人」を絶滅させた

ヒトより脳も大きく、ガッシリしていたのに

──なぜ牙を失い、不便な直立二足歩行を始めたのでしょうか?

チンパンジーはオス同士の戦いで牙を使う。でも人類はオスとメスが集団生活をする中で、初めて一夫一婦制かそれに近い社会を作った。メスをめぐる争いがなくなったから牙という凶器を捨てた。

一夫一婦制はオスがメスや子供に食物を手で運ぶために始まりました。もちろん最初は一夫多妻や多夫多妻などいろんなグループが混在していたことでしょう。その中で結果的にいちばん多くの子孫を残せたのが一夫一婦制だったということ。家族のために食物を運ぶオスは、自分のためにしか食物を収集しないオスより肉食獣に襲われる。

当然生き残るオスの数は少ない。でもメスや子供にとっては、食物を与えられるので生存に有利になる。結果的に直立二足歩行の遺伝子が受け継がれる。進化においては、優れた者が勝ち残るのではなく、子供を多く残した者が勝ち残るのです。

──そして250万年前、ホモ属が現れた。

ホモ属が石器を作るようになると頻繁に肉が食べられるようになり、脳を大きくすることができた。肉は植物より消化しやすいから腸も短くて済む。腸に使うエネルギーを回すことで脳はさらに大きくなる。食事や消化が短時間で済めば、暇な時間を石器用の石集めや石器作りに充てられ、作り方をまねるための仲間とのコミュニケーションなど知的活動が増えます。

人類史上最大の脳を持っていたのがネアンデルタール人

──脳の大きさ=頭のよさ?

頭のよさというより、脳の活動が多かった。ヒトに最も近縁な種で4万年前に絶滅したネアンデルタール人や、同じヒトでも1万年前のほうが現代人より脳容量は大きかった。

更科 功(さらしな いさお)/1961年生まれ。東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。現在、東京大学総合研究博物館研究事業協力者。東京大学大学院、早稲田大学、明治大学などでも講義。主なテーマは動物の骨格の進化。著書に『化石の分子生物学』『爆発的進化論』など(撮影:大澤 誠)

人類史上最大の脳を持っていたのがネアンデルタール人。彼らは私たちとは違う何かを考えたり、想像もつかない能力とか、現代人の物差しでは測れないものを持っていたんじゃないか。脳の形から、見たものを処理する視覚野の部分が大きいので、視覚に関係する能力はネアンデルタール人が勝っていたでしょう。

──40万~50万年前に別のホモ属からネアンデルタール人とヒトが分化した。つまり両者は兄弟?

兄弟というよりは双子ですね。祖先の集団の一部がアフリカを旅立ち、その一部がヨーロッパに移住、そこからネアンデルタール人は進化した。一方アフリカに住み続けた集団からはヒトが進化した。

2種はヨーロッパとアフリカで別々に暮らし、4万7000年前にヒトがヨーロッパに進出してネアンデルタール人と再会する。

その後ヒトがヨーロッパへ大量進出してからは3000年くらい両者は共存しました。互いの接触はなるべく避けたと思いますが、少数ではあるけど両者は交配もした。

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