「ドミニカ共和国には甲子園のような18歳をピークとする大きな大会はありません。子どもは最初からメジャーリーガーになりたいと思っている。そこから逆算して、技術やメンタルを学んでいくわけですが、指導者はその根底にもっと大事なものがあるというのです。それは”その選手が野球を好きになれるかどうか”ということです。
それがないと、技術を磨いたり、激しい競争の中で力を発揮したりすることもできない。だから、日本でいう小学生の時代には”野球好き”になることに集中する。とにかくこのスポーツは楽しい、時間も忘れてできる、と小学生のうちに思わないと、その先の可能性がないという考えです。
子どもたちに野球のいろんな動作をさせる。うまくできるときも、できないときもありますが、うまくできたときに、指導者がぱっと褒める、そういう繰り返しで、”野球が好き”という気持ちを育んでいくんですね。子どもたちはもともとうまくなりたい、という気持ちを絶対持っています。その気持ちを伸ばしてやるわけです」
日本とドミニカ共和国、どちらが野球先進国?
阪長はドミニカ共和国の野球の秘密を知り、これを深く学んで日本の野球関係者にも伝えたいと思うようになった。
「ドミニカ共和国の野球を見ていると、もっと日本の野球は変わっていかないと、発展性がないんじゃないか、と痛感します。ドミニカ共和国やほかの国で学んだ野球指導の経験を生かせば、子どもたちの可能性をもっと引き出せるんじゃないか、日本の野球を世界に広めようと出ていったが、逆に日本が世界から学ぶこともたくさんあるのではないか、と思うようになったんです。
日本に帰ってきたのは2014年です。以前から堺ビッグボーイズの瀬野代表とは、連絡を取っていました。瀬野代表が考える少年野球の未来に共鳴して、参加させていただくことにしたんです」
こうしてドミニカ共和国など世界で学んだ「野球」は、大阪にもたらされることになった。
「ドミニカ共和国の子どもたちは、小学生の時はほとんど練習しません。ずっと遊んでいるだけ、ひたすらバット振って、好き放題やっているだけです。日本ではさすがにそうはいかないから、練習メニューはあまり参考になりませんが、先を見据えた指導を行うという考え方は参考になります。
ドミニカ共和国の子は本当に野球を楽しそうにやります。それに、失敗を恐れていないし、できると思っている。すごくポジティブです。あちらでは大人が子どもをリスペクトしています。子どもがやりたいことは尊重する、そして大人はそれができる環境を用意してあげる。でも、踏み込まない領域があって、子どもがチャレンジすることはサポートするが、ああしなさいとか、なぜできないの、とかは言いません」と阪長は話す。
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