日本野球の対極にある「ドミニカ野球」の正体 DeNAの筒香選手は野球観が大きく変わった

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「高校野球、部活は教育の一環か? だとすれば、どういう部分がそうなのか?」

セミナーで指導者を前に話す阪長氏(筆者撮影)

指導者たちは口々に発言した。

「どのように生きるかを知らしめる」
 「人間性を身に付ける」
 「礼儀、作法」
 「チームワーク」
 「モノの考え方、生き方」

ひととおり出尽くしたところで、阪長は指導者に向かって、こう言った。

「これってみんな、子どもの将来に向けた目標ですよね。教育なんだから、そういうことでしょう。でも、皆さん、実際には子どもたちに在学中の結果を求めていませんか。甲子園や全国大会へ向けて勝つこと、成果を挙げることを求めていませんか? 教育とは教育を終えてから成果を出すことが目的であるにもかかわらず、教育中の結果を求めることは教育ではないのではないですか? ドミニカ共和国と、日本の少年野球の最大の違いはここにあるんです」

指導者は一様に、はっとしたような表情をした。

「ドミニカ共和国の子どもたちは、日本の子どもたちに比べて道具を大事にしないし、時間にはルーズ、ルールもきちんと守るのは苦手です。そういう部分は、日本が一番優れています。ドミニカ共和国の指導者も”見習いたい”と言います。そういう日本の良い部分と、ドミニカ共和国の、目の前の結果ではなく、先を見据えた指導を合わせれば、すばらしい野球ができると思いませんか?」

堺ビッグボーイズ代表の瀬野竜之介も言う。

「ドミニカ共和国の野球は、全部良いわけではありませんが、年代ごとに育成方法はよく考えられているし、小さい頃から無理をさせない仕組みができています。だから良い選手がたくさん出てきます。日本でもこうした仕組みを”ツール”として活用してほしいですね」

前へ進むことが大切だ

このオフ、横浜DeNAベイスターズは、筒香嘉智の横浜高校の後輩で、若手の有望株である乙坂智のメキシコウィンターリーグへの挑戦を許可した。筒香の実績があったから、今回は、その目的をすぐに理解したのだ。筒香嘉智は1月14日のメッセージの最後をこう締めくくった。

「人間は前例のないことを嫌います。(2015年オフに)ウィンターリーグに行くときも、いろんな人に反対されましたが、僕が翌年活躍したら、それからは、何も言われなくなくなりました。むしろウィンターリーグ行けと言う人が増えました。少しの周りの声におびえることもなく、必要なことはどんどんやっていきたい」

野球界の改革はこういう形で少しずつ進んでいくのかもしれない。

(文中一部敬称略)

広尾 晃 ライター

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ひろお こう / Kou Hiroo

1959年大阪市生まれ。立命館大学卒業。コピーライターやプランナー、ライターとして活動。日米の野球記録を取り上げるブログ「野球の記録で話したい」を執筆している。著書に『野球崩壊 深刻化する「野球離れ」を食い止めろ!』『巨人軍の巨人 馬場正平』(ともにイースト・プレス)、『もし、あの野球選手がこうなっていたら~データで読み解くプロ野球「たられば」ワールド~』(オークラ出版)など。

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