「市民マラソン大会」激増の知られざる舞台裏 町おこしにつながるが競争はシビアに

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今回、「勝田」の会場裏にテントを設営していた、出場回数の多い東京都の30代女性(夫が出場し、自身は故障のため不出場)に聞いた。「待機組にとって、無料のチキンヌードルや甘酒の提供はうれしいが、物販店はもう少し充実してほしい」との意見だった。

「役人感覚」を捨て、参加料も値上げ

2017年に開催された市民マラソン大会・参加人数(※)の1位は、前述の東京マラソンで3万5824人、2位は大阪マラソン(3万2259人)、3位は沖縄県のNAHAマラソン(2万9975人)だった。勝田全国マラソンは7位(2万1613人)となっている。

※「計測工房」調査。大会によって、エントリー人数、出走人数、申し込み人数に分かれる。

ひたちなか観光大使がPRした、大会の単行本(筆者撮影)

ひたちなか市では、商工会議所が主導して、大会の歴史や特色を綴った単行本も制作。歴史の長さを踏まえて「日本4大マラソン」を公言する。本間市長も『ランナーズ』が主催するイベントに参加するなど、“トップ営業”に意欲を示す。取り組みの裏には、県都・水戸市に隣接する、ひたちなか市の危機感もあるのだろう。

「私も前職は県の職員でしたから自戒を含めてですが、とかく、役所の人間は『前例踏襲』で物事を進める。勝田全国マラソンも、全国有数の参加者となり諸経費も増大したのに、一般の参加料はほかの大会と比べても低いままに据え置かれていました。それを最近6000円に改定したのですが(高校生は3000円)、その分、中身を充実させてランナーの満足度を高めることができたと思います」(本間氏)

「ファミリー賞」を受賞した家族ランナー(筆者撮影)

各地の大会では参加賞や特別賞にも工夫を凝らす。たとえば「焼津みなとマラソン」(静岡県焼津市)では「飛び賞」として10人に3人の割合で当たるカツオが名物だ。「勝田」では、参加者全員に県内産「乾燥イモ」(完走の洒落)、「長袖Tシャツ」を配るほか、家族で参加した「ファミリー賞」当選者では、市内のコーヒー会社提供の「コーヒー1年分」が配られる。当日、発表を聞いた参加者からは「いいな」という声も上がった。

マーケティングでいう「消費者はどんどん変化する」は市民マラソン大会も同じだ。過当競争ゆえ、安全面に配慮しながら魅力を打ち出さないと、生き残れない時代となった。

高井 尚之 経済ジャーナリスト、経営コンサルタント

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たかい なおゆき / Naoyuki Takai

学生時代から在京スポーツ紙に連載を始める。卒業後、日本実業出版社の編集者、花王情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画・執筆・講演多数。近著に『なぜ、人はスガキヤに行くとホッとするのか?』(プレジデント社)がある。

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