「市民マラソン大会」激増の知られざる舞台裏 町おこしにつながるが競争はシビアに
今回の大会前には大雪も降った。前日も雪がちらつき、多くの職員が除雪を行ったという。ここまで職員が参加するのは別の理由もある。実は、大会規模や歴史の割に、同大会は企業からの協賛金が少ないのだ。
「2016年に始まった県庁所在地・水戸市のマラソン大会の企業協賛金が約4000万円なのに対し、ひたちなか市はその4分の1以下。2万人を超えるランナーが安全に走れるのも、多数の方のご協力あってです。レース中はAED(自動体外式除細動器)を持った大学生による自転車の“見回り隊”が巡回するなど、市民力ではどこにも負けません」(本間氏)
マラソン大会で費用がかさむものに「警備費」がある。地元警察や消防、自衛隊にも協力を仰ぐが、参加人数が多いと、民間の警備会社に委託する開催地も多い。ひたちなか市の場合、「カネがなければ知恵を出せ」の方式で、大会の運営を行う。
特色に乏しい大会は「終了」に
「健康志向」や「現役志向」を反映してランニング人気は根強い。データで紹介すると、「成人の年1回以上のジョギング・ランニング実施者は約893万人」「うち約467万人が週1回以上のランナーであると推計される」(2016年、笹川スポーツ財団の調査)。
また、ランニングポータルサイト「RUNNET」が行った「ランナー世論調査2017」によれば、同調査に回答した約1万7000人の市民ランナーの内訳は、男性81%、女性19%。男女ともに40代、50代が過半数を占めていた。「健康寿命が気になる世代」なのだ。
そうした意識も背景に、市民マラソン大会が増えたが、中止に追い込まれる大会も出てきた。たとえば「たねがしまロケットマラソン」(鹿児島県)は2017年で30回の歴史を終えた。「2016年に『鹿児島マラソン』が始まったように、知名度が高い県庁所在地が大会を開催すると、県内の大会が影響を受けるケースもある」と、ひたちなか市関係者は話す。
茨城県でも2016年から水戸市が「水戸黄門漫遊マラソン」を始めたので、他人事ではないのだろう。「さまざまな大会に参加するランナーは経験値の高い“消費者”でもあるので、各大会を厳しく吟味する一面もある」(前出の黒崎氏)と指摘する。
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