「障害者雇用って通常の雇用と比べると賃金が低いんです。会社にもよると思いますが、月の手取りが20万円いけば多いほうです。極端な言い方をすると、僕と妻の年収両方合わせても、同年代の人の年収に届くか届かないくらいだと思います。アルバイトと同じような感覚ですね。
よくあるのが、15万~35万円の振り幅のある月収の障害者雇用の求人。その15万あたりが精神障害の人で、30万円あたりの人は身体障害の人たちなんです。身体の人たちは、精神の人と違って突然会社を休むような体調不良に陥ることが少ないです。体の一部にだけ障害があり、ほかは普通の人と変わらないので、できる仕事も多いです。
今後は子どもが生まれると申請すればもらえるおカネを駆使して、なんとかギリギリやっていけるレベルなのかなと思っています」(カズヤさん)
発達障害の人の生き方をもっと発信し、知ってほしい
先述したようにアユミさんは数え切れないほど、カズヤさんも何度か転職をしている。そのたびに、「うちは身体障害者しか取っていない」「発達障害の人は取っていない」とエージェントを通して落ちた理由をフィードバックされたことがあるという。差別にあたるとも考えられる一方、会社側も戦力になれる人材を要している。
「私が障害者だと認定された7年前に比べれば、障害者の人への意識は高まったとは思います。身体や知的障害者の方に対する差別は減ってきたのかなと思う一方で、発達障害は新しい障害というと語弊がありますが、なじみの薄い障害です。発達障害は100人いたら100パターンあるんです。
発達障害は本来の性格にちょっと上乗せされたような状態です。だからこそ、どう接すればいいのかと言われると答えがないというところは確かにあります。受け入れる企業側も難しいと思います。なので、もっとメディアが発達障害の人がどう生きているのかを発信して、それを見た人たちがポジティブな感情でもネガティブな感情でも、それは受け取る側の自由なので、まずは知るきっかけの1つになればいいなと思っています」(カズヤさん)
今回の取材は「口下手なので、あらかじめ話す内容をまとめてきました」と、アユミさんはA4用紙10枚にも上る「自分史」を書いてきてくれた。その様子をカズヤさんは「当事者自身が自分の障害を正しく理解することは重要。妻はすごいと思う。自分で理解することが周りに理解してもらう近道なのでは」と語っていた。
カズヤさんは活発でおしゃべりなタイプ、アユミさんは口数は少ないものの芯のある方だという印象を受けた。「真逆の夫婦だからこそバランスが取れているけど、それは障害のある・なし関係ないかもしれない」と語るカズヤさん。
取材を終え、この夫婦と駅まで一緒に帰った。妊娠中のアユミさんを守るよう、階段ではなくエレベーターを利用する2人の姿は輝いて見えた。これからも試練が待ち受けているかもしれないが、2人で手を取り合って障害と向き合えば、新たな家族と一緒に歩んでいけそうだ。
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