川崎F・中村憲剛「黄金の1年」といえる転換点

Jリーグの歴史を動かしてきた「心の声」とは

2017年シーズンにリーグ優勝を決め、チームメイトともに中村憲剛選手(最前列中央右)は喜びを爆発させた(写真:The Asahi Shimbun/Getty Images)  

プロサッカー選手にとって、栄光に満ちたシーズンであれ、挫折にまみれたシーズンであれ、振り返ってみれば、キャリアにおいて大きな意味を持つ。そうした濃密なシーズンを描き、その選手の生き様を浮かびあがらせているのが、飯尾篤史氏が上梓した『黄金の1年 一流Jリーガー19人が明かす分岐点』だ。

本書に登場するのは、中村俊輔、中村憲剛、小笠原満男、大久保嘉人といった日本サッカーを引っ張ってきた選手たち。今回はその中から、2016年シーズンのJリーグMVPに選ばれ、2017年シーズンにリーグ優勝を果たした川崎フロンターレの中村憲剛にとっての分岐点を取り上げる。

 

あの年があったから今がある――。

そんなふうに、プロ生活の節目と言えるシーズンはいつだろう?  そう訊ねると、中村憲剛は「難しいな」と考え込んだ。

16年シーズンにプロ14年目を迎えた彼にとって、思い出深いシーズンはいくつかあるはずで、そう簡単に絞れるものでもないのだろう。

そこで「2007年はどうだろうか?」と提案した。クラブで初めて国際大会に出場し、日本代表としても初めて国際大会を戦い、クラブでカップ戦決勝の舞台に初めて立ったのが、この年だったからだ。

「なるほどね」と納得する表情を見せた憲剛は、記憶の糸をたぐるようにして言葉をつないだ。

「確かにものすごく濃密で、目まぐるしかったのを覚えている。フロンターレに対しても、自分に対しても、周りの見る目が急激に変わっていって……」

横浜F・マリノスの03年、04年の連覇によって鹿島アントラーズとジュビロ磐田の2強時代に終止符が打たれたJ1リーグはその後、05年の王者・ガンバ大阪と06年の覇者・浦和レッズによる2強時代を迎えようとしていた。その両雄に割って入ろうとする新興勢力――それが川崎フロンターレだった。

一流選手ほど転換点といえるシーズンがある(イラスト:宮内大樹 提供:ソル・メディア)

05年、5年ぶりにJ1復帰を果たすと、06年は開幕から快進撃を続け、2位でシーズンを終える。J1復帰からわずか2年でACL 出場を決めた川崎は、優勝候補の一角として07年シーズンを迎えた。

手元の『週刊サッカーダイジェスト』を眺めながら、憲剛が振り返る。「ここにも、フロンターレが『強豪』って書かれているけど、そんなこと、1年前は誰も言ってなかった。これだけでも立ち位置の変化がわかりますね」

もっとも、立ち位置が変わったのはチームだけではない。チーム以上に変化を味わっていたのは、憲剛自身だった。

日本代表デビューは2006年10月

06年夏のドイツ・ワールドカップ終了後に日本代表監督に就任したイビチャ・オシムによって代表に抜擢された憲剛は、06年10月4日のガーナ戦で代表デビューを飾る。その7日後のインド戦では豪快なミドルシュートを叩き込んで代表初ゴールをマークし、11月15日のサウジアラビア戦ではボランチとして堂々と攻撃を組み立てた。

07年を迎え、日本代表の新星として注目される憲剛への取材攻勢は加熱する一方だった。トレーニングを終えた直後や、クラブハウスを出る間際、車に乗り込む直前にも、多数の記者に囲まれた。

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