日本政府による「北朝鮮制裁」のひ弱な実態 制裁における「司令塔」すらいない

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――日本政府の立場には、ロシアや中国が反応していますね。

皮肉にも、制裁の骨抜きを狙うロシアや中国が日本の立場を支持した。ロシアは、安保理の北朝鮮制裁委員会で日本支持すら表明した。これが圧力強化を声高に叫ぶ日本政府の実態だ。

法執行の「抜け穴」を丁寧に埋める必要がある

――安倍晋三首相は「北朝鮮には圧力を」と繰り返し述べていますが、安倍首相と政府の行動にギャップがあるということですか。

日本政府には制裁における「司令塔」がない。船舶・貨物検査では、ようやく内閣官房国家安全保障局が関係省庁を取りまとめるようになったが、法整備や国際協力には着手できていない。内閣官房に特別本部が必要だと思う。

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法整備、貨物・船舶検査のオペレーション、国際協力等を統合しての、全関係省庁によるオールジャパン体制が不可欠だ。

決議の完全履行には、現行法の拡大解釈や改正ではもはや対応できない。「北朝鮮制裁法」を制定して、法執行の「抜け穴」を丁寧に埋める必要がある。

――国連の各国スタッフの能力の差を本書から感じました。大国のエゴでスタッフを就任させたり、そのスタッフの能力などもさまざまなようですね。

ニューヨークの国連本部には、100人以上の優秀な日本人職員がいるが、日本政府の支援がなく、昇進できない。

他方、英仏は、国連安保理の主要ポストを押さえるべく、国家一丸となり人事戦略を進めている。たとえばフランス外務省は、法務省の職員をテロ対策の主要ポストに押し込む。5年後、本国に召喚し政府内で昇進させると、国連でより高位のポストに応募できるようになる。こうして、上位ポストの独占を図る。5年がかりの「オール・フランス」の人事戦略だ。

省庁間の縦割りが激しい日本では、想像もつかないアプローチだ。反省して、見習うべきだ。

福田 恵介 東洋経済 解説部コラムニスト

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ふくだ けいすけ / Keisuke Fukuda

1968年長崎県生まれ。神戸市外国語大学外国語学部ロシア学科卒。毎日新聞記者を経て、1992年東洋経済新報社入社。1999年から1年間、韓国・延世大学留学。著書に『図解 金正日と北朝鮮問題』(東洋経済新報社)、訳書に『金正恩の「決断」を読み解く』(彩流社)、『朝鮮半島のいちばん長い日』『サムスン電子』『サムスンCEO』『李健煕(イ・ゴンヒ)―サムスンの孤独な帝王』『アン・チョルス 経営の原則』(すべて、東洋経済新報社)など。

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