――北朝鮮側の巧妙な制裁逃れに悔しい思いをされた経験も、赤裸々に書かれています。
北朝鮮は、密輸や資金洗浄などを長年手掛けてきたプロ集団だ。他方、各国の取り締まり当局の担当者は2~3年で交代する。これでは太刀打ちできない。各国で国連の窓口となる外務省と、貿易や金融等の制裁実務にかかわる関係省庁との連携も悪い。国家間の協力体制も不十分だ。
北朝鮮は法を破ってでも必死で制裁網を突破するが、取り締まる側は法を守りつつ制裁を履行しなければならないので、北朝鮮のスピードに追いつけない。たとえば、日本製品を北朝鮮へ密輸するネットワークの関係者を警察が把握していても、逮捕までに数年かかっている。
――本書には、北朝鮮への制裁に対する常任理事国の思惑をはじめ、制裁決議がうまく機能しない事例が紹介されています。
安保理決議には、制裁違反者に対する渡航禁止や資産凍結など、強力な制裁措置が盛り込まれているが、各国が履行しなければ紙の上の文言にすぎない。
決議を曲解して制裁を骨抜きにする、制裁違反の証拠を突きつけられても認めようとしない国は数多い。このような国が安保理のメンバーにいる。たとえばロシア。制裁違反容疑のロシア企業について捜査協力を要請すると、「違反を示す確定的な証拠がなければ協力しない」と返してくる。先に有罪が確定していなければ、捜査には協力しないとの姿勢だ。
また、ほぼすべての国連加盟国で、決議履行のための国内法は未整備だ。日本もそうだ。ある日本人が海外で国連制裁に違反しても、日本国内にはそれを処罰する法律がなく、おとがめなしとなってしまった事例がある。切歯扼腕の思いで傍観せざるをえなかった。
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