中島みゆき好きが集う「新宿2丁目」の熱い夜 元証券マンのママが築いたスナック「碧珊瑚」

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店内には中島みゆきの写真やサインが(写真:筆者撮影)

茂ママの生まれは石垣島とのこと。3人の姉を持ち、女性に囲まれた暮らしだったそうだ。その後、父の仕事の関係で神奈川県に移り、小田原市で中学~高校生活を送る。大学卒業後は、簿記の知識を活かして証券マンとして働き始めた。

当時の茂ママは、接待三昧の同僚をよそに、顧客を増やすために新規開拓営業に励んだ。「付き合いが悪い」と言われながら、顧客との信頼関係を築き、誰よりも早くノルマを達成するトップセールスマンへと登り詰めた。

本当の願いが胸の中で目を醒ました

一方、会社では決して自らの素を見せなかった。女だらけの家族の中で、何気なく使っていた“オネェ言葉”。その言葉を自由に話せ、唯一、心が開放できるコミュニティは、大学時代から常連客として通うゲイバー「ゲンキ」であった。

そこには、中島みゆきをはじめとする歌謡曲好きが集まり、徐々に、自らもその世界にはまっていった。

碧珊瑚の棚には、中島みゆきなどのCDがずらりと並んでいる(写真:筆者撮影)

やがて、走り続けた社会人生活に違和感を覚えるようになる。自分自身を信頼してくれる顧客に株を売りつけ、損をさせている商売が理不尽だと思う気持ちを、割りきる事ができなくなっていく。

「じんどぅずんぶん(金は知恵なり)」という家訓を唱えながら、激流のような時の中で、豪遊する仲間をよそに毎月貯金をした。その中で、いつか自分の店を持ちたいという気持ちは次第に大きくなるばかり。

1988年。日本がバブル景気に沸いている頃、「ゲンキ」のママから閉店を告げられる。お店を引き継ぎたいと思っていたのにもかかわらず、自分は縁なき人だからと言い出せない茂ママに、やがて、本当の願いが胸の中で目を醒ます。

「あの場所がまだ空いていたら、挑戦してみよう」。

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