中島みゆき好きが集う「新宿2丁目」の熱い夜

元証券マンのママが築いたスナック「碧珊瑚」

「この先生ね。中島みゆきの『誕生』という曲をこの店で初めて聞いたとき、人目をはばからずに大泣きしたのよ」と、茂ママがいたずら顔で『誕生』をかける。

「うちはスナックだけどカラオケは置いてないでしょ。でも、中島みゆきの曲に合わせてみんなで歌う“アリオケ”で盛り上がるの」。その言葉通り、曲が進むにつれて客同士が肩を組み、音楽に合わせ歌い出す。先生は泣き崩れていた。

いつの間にか店内に響き渡る歌声

茂ママが私の耳元でそっとささやいた。

中島みゆきの記事などをスクラップしたファイルが何冊もある(写真:筆者撮影)

「誰にも素を出せない時代。みゆきの歌は、そうした気持ちを代弁してくれていたの。ここは、周囲に理解してもらえない気持ちを抱えている人たちが集まる場所。みゆきの歌に涙し、助けられ、そうやってみんな生きているの。中島みゆきはみんなの応援歌なのよね」。

常連客で今は毎週1回アルバイトもしているという青年も、「まるで自分の事を歌っているじゃないかって思うの」と話す。

いつの間にか、狭い店内に歌声が響き渡る。ふっと編集者Mを見ると、なんと、大泣きしているではないか。もうすっかり客の1人になっている。

このように多くの人を癒やし続ける碧珊瑚だが、入店制限などはあるのだろうか。

「自分の事しか話さない人はお断りしているわ。不思議なことだけど、扉を開いた瞬間に、なんとなくどんな人かわかるの。もちろん、中島みゆきのことを非難するお客様にも帰っていただくわ。共感できる人が集まると、みんながすごく気持ちよくなれる。私はそういう雰囲気も維持していかなきゃならないわけね」。

聞くと、過去20年間、女性の客は断っていたとのこと。ただ10年ほど前からは、平日のみ女性の入店を許可したそうだ。それからは、女性客もよく来るようになった。

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