中島みゆき好きが集う「新宿2丁目」の熱い夜 元証券マンのママが築いたスナック「碧珊瑚」

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「当時、働いていた会社では役員にも認められる立場にいたんだけど、全然休みがなかったんですよ。それで将来の夢を茂ママに話したら、『私がおカネ出すから、あなた、今すぐ会社をやりなさい!』って言ってくれて。それで300万円を託してくれたんですよ」。

今では多くの支店を持ち、年収5000万を稼ぐ社長となったいっしーさん。プライベートでは結婚し、子どももできたという。それでも、忙しい仕事の合間をぬって、茂ママへの近況報告と手料理を味わいに来るそうだ。

「私は証券マンだったから、人を見抜く力があるの。この子は人目見たときから可能性を感じたわ。もちろん、会社を成長させるために、財務から決算まで厳しく口出ししたけどね」と、茂ママは当時を思い出していた。

18年通う常連さんも救われていた

いっしーさんはこの日、高級シャンパンのヴーヴ・クリコを3本もあけ、何度も茂ママと乾杯していた。過去の経験と自身の見る目を信じ、将来を賭け、一人の男を成功に導いた茂ママ。その器の大きさを感じさせるエピソードである。

茂ママを慕うお客さんが次から次へとやってくる。店は深夜前には満席になっていた(写真:筆者撮影)

「みゆきのイベントに行ったとき、茂ママと会ったの。名刺交換をして意気投合。すぐに碧珊瑚にお邪魔したわ」。

こう話すのは、中島みゆきをはじめ、歌謡曲などのCDのBOXは必ず手に入れるというBOXサトルさん。18年の常連だ。「今は派遣の仕事をしているけど、会社の人とはほとんど飲みに行かない。でもこの店で出会った人とは、食事に行ったり、イベントに行ったりするのよ」。男女の友達も増えたそうだ。

「ある日、病気で倒れちゃって入院しなきゃならなかったの。私は北海道出身だから両親にすぐ来てもらうことができなかったのね。そしたら、茂ママが親代わりとしていろいろな手続きをしてくれて。茂ママとは心と心の付き合いができる、困っている人がいたらちゃんと手を差し伸べてくれる。そういう人よ」。

BOXサトルさんと話していると、ドイツから旅行で訪れたという美男子が1人で入ってきた。昨日に引き続き2日目だという。言葉は片言だが、この店の居心地の良さを気に入ったという。

美男子君の話を聞いていると、「こ~んばんわ~!!」と異様なテンションの高さで、なだれ込むようにして男性が店に入ってきた。何でも有名大学の教授だそうだ。5年ほど前、紹介で碧珊瑚を訪れ、今では茂ママの代わりにサポーターとして店に立つこともあるという。

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