一口に「スナック」と言っても、その中身は多種多様である。外観と内観、雰囲気、コンセプト、そしてママやマスターのパーソナリティなどは、店舗に独自の“色”をつける。それがスナックの醍醐味でもあり、奥深さでもあるのだ。
今回の舞台は、世界有数のゲイタウン「新宿2丁目」。連日、“同好の士”によって夜会が繰り広げられている街だ。近年では、外国人観光客向けのガイドブックに掲載されるなど、国際的な観光スポットとしても人気を博している。
「あら、女が来たわ」
その中心部とも言われるメインストリート「仲通り」のすぐ側に、「新千鳥街」はある。新宿遊郭の名残を色濃く残したディープなスポットだ。灯りともる看板が新千鳥街への道標となっている。
奥へと続く通路は、女性はおろか、初めて訪れる男性でも尻込みしてしまう雰囲気がある。間口の狭い扉が隣り合い、上下合わせて約40の店舗が軒を連ねている。色とりどりの表札には「毒」の一文字、「少年アリス」、ホモ古本ブックカフェ「オカマルト」など、いずれも刺激的なネーミングが表示されている。
その路地裏に、スナック「碧珊瑚(あおさんご)」はある。
中島みゆきの歌と、沖縄の海をこよなく愛する人々が集うスナック。それが碧珊瑚である。扉は他の店同様に狭いが、扉の上に飾られた鯉のぼりが他店と違う入りやすさを演出する。
勇気をもって扉を開くと、カウンターの中で料理の支度をする茂(シゲル)ママと目が合った。「あら、女が来たわ」。低い声で、明らかに歓迎されていない一言に後退りするが、「ど~ぞ~、奥へ座って~」との声に、筆者と編集者Mは中に入った。
店内は4~5畳ほど。カウンターを取り囲む椅子に7~8名が座れば満席だろう。狭い店内の壁には、中島みゆきのCDや写真が所狭しと飾られ、中島みゆきの歌が流れている。
壁一面に描かれた海の絵には「2017年 29周年」との文字が。「それは、昔ここでチーママとして働いていた男の子が、毎年、書いてくれているの。この海は石垣の海。今年、この店は30周年を迎えるのよ」。
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