【産業天気図・証券】世界経済・金融市場の先行きに不透明感。「雨」予想に下方修正
08年10月~09年3月 | 09年4月~9月 |
世界経済や金融市場の先行きに不透明感が漂う中、証券業の2008年度後半の天気見通しは「雨」として、前回(6月)予想の「曇り」から下方修正する。09年度前半については「曇り」を予想する。
証券各社の今08年4~6月期(第1四半期)決算は、米国会計基準の野村ホールディングス<8604>とネット専業3社を含む上場22社のうち、営業増益はなんとゼロ。全22社が営業減益もしくは営業損益段階で赤字に陥った。米国発の金融混乱が長期化・深刻化し、一時は回復しかけた株価も再び低迷しており、証券会社の収益環境は厳しさを増している。
3月に1万2000円を割り込んだ日経平均株価は、5月に1万4000円台を回復。6月中旬まで同水準で推移し、市場関係者の間には「最悪期は去ったのではないか」との見方も広がった。しかし、夏以降、米投資銀行大手リーマン・ブラザーズ・ホールディングスの経営破綻や経営危機に陥った米保険大手アメリカン・インターナショナル・グループ(AIG)が公的救済されるなど、再び金融不安が台頭。米国経済をはじめ世界景気の減速感も強まり、株価も世界的に低迷。日経平均も9月16日に3月安値を割り込んだ。
一方で、7月に1バレル147ドル台の史上最高値まで高騰したWTI原油先物価格は、世界経済の減速に伴う需給の緩和を受けて、投資ファンドの資金引き上げなどが加速。9月13日に5カ月ぶりに1バレル100ドルの大台を割り込むなど、急落している。世界的なインフレは、ピークアウトしつつある。
世界景気の低迷は、過去5期連続で最高益を更新してきた日本企業にとっては逆風だ。また、投機資金は株式をはじめとするリスクの高い資産から、国債や社債など、比較的安全性が高いとされる債券に比重を移しつつある。
証券会社にとっては、主力とする株式委託手数料収入が弱含んでいるほか、IPO(新株式公開)や増資引き受けなどの投資銀行業も苦戦。07年前半は好調だった投資信託の販売についても、相場が弱含んでいる影響で足元は前年割れしている。証券会社にとっては、投資信託の残高報酬や外債販売の大崩れこそ見込まれないものの、株式関連収益と投信販売手数料の落ち込みをカバーしきれないだろうというメインシナリオに変更はない。
「会社四季報」秋号では、上場証券22社の今09年3月期業績予想について、13社の営業損益(野村HDは税前損益)を減額、4社を据え置きにした。野村HDは米国のモノラインと呼ばれる金融保証会社向けの引当金繰入や自己投資先・子会社株の減損で1200億円超の損失を計上。前期の大幅赤字に続いて、収益は低迷する見込み。大和証券グループ本社<8601>以下の主要証券会社についても、苦しい展開を強いられる。
一方で、第1四半期の進捗が良好だった新光証券<8606>、極東証券<8706>など4社は増額とした。新光、極東の2社については、株式関連収益よりも債券関連の収益で稼ぐだろうと想定している。
“リーマン・ショック”をめぐる影響は、日本の証券界にも早速出始めた。野村HDは破綻したリーマンの欧州・中東・アジア・太平洋地域における主要部門で働く約5500人のリーマングループ従業員を、野村グループで雇い入れることを決めた。トレーディングなどの負債・資産を引き継がずに、証券会社経営のキモとなる人材を一手に引き受け、これまで欧米の競合に出遅れていた同地域におけるビジネスを一気に強化する。
一方、リーマンの破綻とともに進んだ米銀大手バンクオブアメリカによる米国証券大手メリルリンチへの救済合併の余波にも注目だ。メリルリンチ日本証券は08年3月期営業収益が1298億円と、国内主要外資系証券5位。同社の広報担当者は「今後については未定」としているが、バンカメとの今後の連携が注目されるところだ。
【武政 秀明記者】
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