【産業天気図・造船・重機】造船は受注残豊富だが鋼材高が打撃。明暗際立つプラント・機械
08年10月~09年3月 | 09年4月~9月 |
6月の産業天気図では2008年度後半は「晴れ」と予想していたが、今回、「曇り」に変更する。09年度前半も「曇り」。最大の理由は、鋼材の大幅値上げだ。
造船各社は軒並み4、5年分の受注残を抱えており、現場の繁忙感に変わりない。が、高付加価値船と言われるコンテナ船でも総原価の20%を鋼材か価格が占める。厚板価格の5割増のインパクトは強烈だ。足の短いバルクキャリア(バラ積み貨物船)が稼ぎ頭の三井造船<7003>は今09年3月期の経常利益見通しを50億円減額し、佐世保重工<7007>は08年4~6月期(第1四半期)に工事損失引当金を6・6億円積み増した(前期末32億円)。
ただ、鋼材価格の影響は船種や会社によってバラツキがある。もっとも影響が深刻なのは、原価に占める鋼材価格の比重が高く、船価の上昇が鈍いVLCC(超大型タンカー)。逆に、LNG船など足の長い船種が中心の三菱重工<7011>は08年度の鋼材についてはほぼ手当を済ましており、造船の部門収益はむしろ増額される方向にある。
しかし、早めの手当の効果も今年度限り。09年度からは全社がフルに鋼材値上げのダメージを受ける。しかも、暴騰した海運市況もここへ来て調整色を強めており、海運会社も新造船の発注に慎重になると予想される。造船は量(受注)、質(収益)の両面で大きな曲がり角を迎えつつある。
一方、プラント・機械も機種によって明暗が際立ってきた。石油・ガスおよび原動機(発電プラント)などエネルギー関連分野は引き続き活況だ。FPSO(洋上石油生産設備)の世界2位企業、三井海洋開発<6269>は今08年12月期、史上最高の4000億円(前期1268億円)の受注を確実にした。日揮<1963>も今期受注は前期比70%増の7000億円になる見通し。エネルギー関連を「明」とすれば、「暗」は国内設備投資・IT関連のプラント・機械だ。住友重機械は<6302>は設備投資関連の減速機などが思うように伸びず、08年度は3期ぶりの営業減益に転じる模様。オルガノ<6368>も半導体向け超純水製造装置の採算悪化が祟り、減額修正の公算が強まった。
09年度は一人気を吐いてきたエネルギー分野も、さすがに、原油市況反落・途上国の成長減速の影響が顕著になると予想される。造船同様、プラント・機械も潮の変わり目に差し掛かったようだ。
【梅沢 正邦記者】
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