外資金融の半沢直樹が企む、100分の1返し

若手バンカーが語る、投資銀行業務の悲哀(上)

グローバルエリートからの講評

さて、大石君はたいへん正しいことに、私を持ち上げることからメールを始めているわけだが、その後書きつづられた生々しいコメントの数々は、日々18時間労働を週末も正月休みもなく繰り返している本人の言葉だけに、極めて重い。

彼は私が就職相談にのっているときに「めでたく内定したら、もものゼリーとか、とらやの羊羹とか、茶菓子のひとつでも持ってきて報告するように!」と言ったのを真に受けて、私と会うたびに茶菓子を包んで持ってくるたいへん立派な人物である。

大石君はM&Aを担当しているのだが、実は投資銀行部門の中ではこのエクセキューション経験がいちばんその後の転職に生きるので、今から入る人で、激務可能で正確で迅速な人にはぜひお勧めしたい。ピッチ(マーケティング)の資料作りといったパワポの世界から、モデルの作成に際するエクセルのショートカットを覚えまくる基礎的なトレーニングに加え、彼の所属する投資銀行はトップバンクの一角なので、日本でも比較的ディールを多くこなせるのは“激務の最中の報酬”であろう。

そこでは弁護士の先生とのやり取りやら、クライアントとのやり取りやら、規制当局とのやり取りやら、諸々のドキュメンテーション作成やら、その後プライベートエクイティへの転職で雇い手が重視する経験を豊富に積むことができる。

新卒時代の彼に私がアドバイスしたことの一つは、投資銀行に入るなら、世界的なブランドネームがあっても自分の部署はピッチばかりやっている――みたいな会社に入るのではなく、仮にゴールドマンに比べたら名前が多少劣ったとしても、ディールエクセキューションを担当できる仕事に就け、ということである。

尊敬できる上司のいる会社を選ぶ

次に大石君は自分の面倒を見、成長を支援してくれる熱い先輩に恵まれていることに感謝している。これも投資銀行などに限らず“幸せなキャリア”にはたいへん重要なポイントだ。大石君の昇進は直属の上司がどれだけ押してくれるかにかかっているうえ、一緒に日々働く上司が自分の成長を考えた仕事を振ってくれるとやりがいもでき、仕事へのモチベーションも強くなるものである。実際に多くのプロフェッショナルの転職理由の“本音編”の1位は、大抵“社内人間関係”が挙げられているのだから。

逆に「この人の仕事を助けてあげたい」と思わせてくれる上司がおらず、「こういう人にだけはなりたくない」という上司しかいなければ、自然と仕事へのコミットメントも弱まり、自分自身の成長カーブも緩くなってしまうものなのだ。

したがって就職活動中の面接では、「この上司のために働きたいか」という自分とチームのフィットを見抜くことも、その後のキャリアの成功のために非常に重要な要素である。

ただし残念ながら、入った頃にはその上司が辞めて競合他社に行ってしまっていることが多いのだが……。「ウチはゴールドマンみたいな、軍隊みたいなやりかたとは違うからいいんだ!」とか新卒の説明会で豪語していた先輩が、往々にしてその3カ月後にゴールドマンのバイスプレジデントとして転職していたりするのである。

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