今のトップは逃げ切ることばかり考えている 丸山茂雄氏「日本全体が終わってるって思う」

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黒川:東芝とか日産とかは生活やインフラに影響するから大事(おおごと)になりますけど、音楽とかエンターテインメントって、ちょっと腐敗してても影響ないじゃないですか。だからなんでしょうかね。

丸山:でも、平気な顔をしてられないよな。東芝EMIがユニバーサルに吸収合併されちゃったけど、それは親会社の東芝がだらしなかったからじゃなくて、結局、神戸製鋼とかもそうだけど、産業全体が逃げ切ろうとしているよね。それは政党でいえば民進党もそうだし、自民党もそうだし、日本の状況自体がそうなんだろうと思うわけ。

黒川:僕は丸さんがSCEやSMEにいらっしゃったときの逸話を改めて読み返しているんです。僕は企業も寿命があって、寿命がきたときに何かを革新して生まれ変わったりしないと多分ダメになると思っているんですが、丸さんはその改革なりをやり続けようとしてきた方だと。僕はそう思っているんですよ。そういう丸さんがいらっしゃった旧SCEやSMEっていうのも、そうした負のスパイラルに陥っているんでしょうか。

丸山:陥ってるよね。

黒川:やっぱり、そう感じますか。

丸山:たとえば、ソニー・ミュージックでいうとね、昭和43年(1968年)に会社を作りましたと。で、エンターテインメントの業種だからっていうんで、ソニーから出向する人数をすっごい絞って。10人いなかったんじゃない? 年齢制限もあってトップをやる小澤さん(小澤敏雄氏のこと、元CBS・ソニー代表取締役社長、会長を歴任)さんがちょうど35歳ぐらい。残りはほぼ昭和13年(1938年)生まれの28〜29歳だったわけだね。

それで、あとは外部から全部取った。昭和14、15年生まれはひとりかふたりぐらいだったけど、昭和16年(1941年)生まれから15人とか20人とかばーっと採るようになって。俺とか稲垣さん(稲垣博司氏のこと、元CBSソニー・プロデューサー/ワーナーミュージック・ジャパン会長)さんとかがそうだね。で、17年生まれからまたちょっと減らして、昭和20年(1945年)生まれの代で新卒を採るようになったっていう。当時は終身雇用だから、先のことを考えたら同年代をたくさん採りすぎるのはね。

黒川:会社の人口ピラミッド構成がおかしなことになっちゃいますよね。

トップになれるのはひとりだけ

丸山:そうだよね。そこまで考えて、会社は採用しているわけ。とはいうもののトップになれるのはひとりだけだからね。ナンバーツーやスリーあたりまで含めても、どうしたって昭和16年生まれの俺たちの職はいずれ行き詰まるっていうのがあった。だから、大賀(典雄)さん(ソニー元社長・故人)、小澤さんは割と早い時期から子会社を作り始めたわけだよ。小澤さん、大賀さんから直接聞いたわけじゃないよ? ただ、俺たちは下から見ていて、「ああ、そういうことなんだ。俺たちは子会社のどこかでやっていくんだな」って思ってた。

黒川:それはEPIC・ソニーとかですか?

丸山:EPIC・ソニーはもっとあと。ファミリークラブとか、通販の会社とか、ソニー・マガジンズとか、ソニー・ミュージックアーティスツの原形とかっていう、そういうのだね。

黒川:ソニー・クリエイティブプロダクツとか。

丸山:そうそう、そういうのをうんと細かく作り始めているわけ。今、いちばんソニー・ミュージック系で勢いのあるアニプレックスもその時点でスタートしていて、1983年か1984年にはもう原形があったからね。ソニー・ミュージックが儲かっている、元気な間に子会社をたくさん作って、そこに人材を入れてって。試行錯誤をうんとしながら手探りでやってたわけだよ。だから、そういう横展開っていうか、広げてるっていうのを俺も意識してやるようになったよね。

黒川:そうですよね。

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