今のトップは逃げ切ることばかり考えている 丸山茂雄氏「日本全体が終わってるって思う」
丸山:ただ、日本人ってのはもともと群れやすいというか……最近だといちばんわかりやすいのは希望の党とか都民ファーストがそうだったよな。小池劇場っていうのがあって、あそこにみんながワーっと行ってね。でも、それが「排除します」っていう、たったひとつの言葉だけで、またダーって引いちゃったわけじゃない。
ああいうふうに同調するっていうのは何もこの時代だけの話ではなくて、昔からそうで。俺が知ってるかぎりにおいて言えば戦前がそうだよね。みんな被害者ヅラして軍部が悪いって言ってるけど、明らかにあの時代、すべての国民がソッチを向いてたよな。向いてたからこそ「敗戦」って言わないで、悔しまぎれに「終戦」って言ってるわけじゃない。
黒川:そうですね。
丸山:でも、明らかにあれは敗戦だよね。で、民主主義化したっていうけど明らかにアメリカに占領されて、そのアメリカの支配を唯々諾々と受け入れたわけじゃない。つまり軍部に代わってアメリカっていう国の支配下に入ったわけだけど、それを割と不思議に思わないっていう部分だよね。
それは、政治であれ経済であれ、それこそ音楽であるとか、文学であるとか、ゲームでもなんでもいいんだけど、今風向きがこっちだなってときは、そんなにキョロキョロしないで、みんなそっちに瞬間的にダーッて行くっていう国民性ではあるわな。でも、みんながダーッと行く方向に、その平均の中に埋もれたくねえってヤツは絶対にいるのよ。そういうヤツは違う方向に行くしかないからね。
黒川:僕も音楽業界にかかわって仕事していましたが、音楽業界って80年代ぐらいから、この30~40年の間、何かが急にヒットして会社が持ち直したりするのを繰り返しているだけで、何ひとつ変わってないような気がするんですよ。なぜ変わらないのかっていうと、やっぱり爆発的に売れる何かが出ちゃうとそれに頼っちゃうし、それがダメになってもいつかまた何か出るよな、みたいな気持ちがつねにあるからじゃないかと思うんですが、丸さんはどのように感じられていますか。
音楽業界ぐらい変わってないものはない
丸山:明らかに変わってないね。日本の全産業の中で音楽業界ぐらい変わってないものはない。それで、結局食えなくなってきてるんだけど、中心にいる人たちは何も焦らずにいて、自分たちがやってきたことへの反省もなく、静かに皆さん退場していこうとしているのは不思議だよね。
それはなぜかっていったら、「あ、自分たちは逃げ切れる」と思っているからだよ。気分よくトップ層にはいるけど、次の人たちのために何かをするとか、あるいは自分のいる業界をさらに発展させようっていう意欲もなく、ひたすら逃げ切ろうっていうのを多分20年間ぐらい続けているわけだよね。
黒川:まさに今の日本の政治と一緒だと僕は思っています。
丸山:恐るべきことだよね。じゃあ、それが音楽業界だけかっていうとそうじゃなくて、ほかの業界も一緒だよね。だから、異業種交流なんかがあっても「お前ら大丈夫なの?」みたいな厳しいことを言われない。まあ、今の音楽業界を見ていると「日本全体が終わってるな」って思うよね。
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